作品情報
夫を殺害した容疑で取り調べを受けるひとりの妻ラニ。自らの多難な結婚生活について語り始めるが、その口から出る言葉は事件の真相をあいまいにするばかりで…。主演は『ピンク』『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』のタープスィー・パンヌー、監督は『Hasee Toh Phasee』のヴィニル・マシュー、脚本家は『Guilty: 不実の代償』のカニカー・ディッローン
『美に魅せられて』レビュー
『スケーターガール』や『おかしな子』のように同時配信される作品もあれば、イギリスで主題歌がランキング入りしている『Roohi』は未だに日本では配信されていない中で、今作が無事に配信されたことは嬉しいかぎりだ。
今インド映画の若手で勢いのある女優のひとりタープスィー・パンヌーの新作がNetflixオリジナル作品である。
『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』の頃は、まだ女性監督や脚本家というだけで珍しかったものが、今では映画業界での女性の活躍が目立つし、とくに若い世代の作る作品は、女性が主導権を握るものが多くなってきており、女性解放運動真っ只中といった感じがしてならない。今回も女性脚本家カニカー・ディッローンによるもので、この脚本家は、インド映画に対してステレオタイプなイメージがある人にとっては、驚くほどのアンダーグラウンドな世界を描くことが多く、今回不倫や性描写も含まれている。
冒頭から、いきなり家が爆発して、夫のちぎれた手が発見される…という、ショッキングなシーンから始まるのも世界市場を意識したつかみ方のように思える。
今作で描かれるのは、派手なものが好きな今時女子。パーティをしたり、キラキラした生活がしたい!と常に思っているが、物静かな男性と結婚したことでそれも諦めるしかなく、さらに姑もうるさいといった、日本の昭和ドラマやサイレント映画『都会の女』のような入り口であり、しばらくはコメディのようなテイストで展開されていく。
女性解放といっても、インドの中でも保守的な地域や家庭では、まだまだお見合い結婚というのが主流だったりする中で、恋愛結婚ではないことにも不満がある。これは、お見合い結婚という風習事態を皮肉っているのだが、完全否定ではなく、実はそこから芽生える愛のかたちもあるということを、かなり極端で誇張されていながらも描いた作品となっている。
警察に事情聴取されていく中で、事件の真実に迫っていくミステリーに変化していくわけで、警察もはじめは疑いながらも、証拠がなかなかないことや、周りの証言の曖昧さから、逮捕できない状態である現状。
何とか自白をさせようとするが…今作を観ていると、この映画で展開されている物語が真実であり、その中で映画的な仕掛けが隠されているように錯覚してしまう。
しかし、そもそもがラニの言葉からのイメージでしかないのだ。
この映画の中の結末も警察官の想像でしかなく、真実とは限らない。姑に邪見に扱われたこと、不倫して今では後悔していること、心から夫を愛していること…全てが嘘の可能性も秘めているということだ。
シンプルにそういった内容なのかもしれないが、それはわからない…インド映画という全体的な他国から見たイメージもそうだが、インドの女性が保守的であると思われがちなイメージも一周回って、巧みに利用しているようでもある。
そこに気づくとこの映画の本当の狂気性が見えてくる…
タープスィーの主演作品は、『ピンク』や『ゲームオーバー』のように、比較的ダンスシーンがないシリアスなものが多かったり、『JUDWAA2』のようにダフルヒロインにして、視点が集中しないようにズラしている感じもするだけに、ダンスは得意では…ないのだろうとは感じられるが、演技は素晴らしい。出演作が年に4本以上あったりもして、忙しいかもしれないが、国際デビューするのも時間の問題かもしれないし、そもそもNetflix映画という点で、国際市場を狙える俳優をキャスティングしているのだろう。
点数 80
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