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この映画語らせて!ズバッと評論!!『首』本能寺の変を大胆アレンジ!これは時代劇版”アウトレイジ”だ!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『首』本能寺の変を大胆アレンジ!これは時代劇版”アウトレイジ”だ!!

作品情報

天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。果たして黒幕は誰なのか?権力争いの行方は?史実を根底から覆す波乱の展開が、“本能寺の変”に向かって動き出す……。

『首』レビュー

『龍三と七人の子分たち』以来の北野武監督作品、しかも「時代劇」として注目されている本作であるが、『座頭市』でタップダンスを取り入れたように、「時代劇」だからといって「時代劇」らしいものを撮るはずがないというのは御察しの通りではあるだろう。ただ、そんな想像のかなり上をいった作品といえる。

時代劇というか、日本の歴史そのものが捏造されていないという証拠もなく、そもそも学校で習うことが正しいものだという根拠はないため、言ってみればファンタジーみたいなものなのだから、史実なんてあって無いようなもの。だとしたら、どんなアレンジがあったとしても抵抗はない。

描かれるのは、王道の「本能寺の変」前後ではあるし、ベースとなるのは欲望まみれの権力争いや裏切りといった散々描き倒されてきた内容ではあるものの、ところどころに散りばめられたギミックが今まで観たことのないような物語を作りあげている。

大河ドラマや『レジェンド&バタフライ』などでも美化されることが多い織田信長が徹底的に外道として描かれているだけではなく、女優が出演していた記憶が無いほどに、男、男、男社会。大奥なども全く出てこない。

もちろんモブ的には出演しているものの、実際にセリフのある女優としては、柴田理恵ぐらいしか出演していた記憶がない。

誰の側について、誰を切り捨てるかという駆け引きを恋愛にも見立てているのだろうか、そのためBL要素が強く、中年男性同士のラブシーンもある。またそれが生々しくて、これを世界がどう観たのかは気になるところだ。

吉本芸人が多く出演していることもあって、シュールな笑いは常に飛び交っていたり、忍び同士のバトルもわざとチープな特撮感を演出するなど、細かい遊びに満ち溢れた作品ではあるのだが、同時にバイオレンス映画としての側面も兼ね備えている。ヤクザをサムライに置き換えた時代劇版「アウトレイジ」と言っても過言ではないだろう。

近年の時代劇といえば、大河ドラマも血がほとんど出ないし、『燃えよ剣』や『レジェンド&バタフライ』、『峠 最後のサムライ』などを観ても極端なほどに出血が抑えられていて、生首が転がるようなシーンはほとんど無い。そんな生ぬるい描写にあふれたジャンルとなってしまったことにメスを入れるかのように、 タイトルの通り首がばっさばっさと切れていく。

現実的に考えて、刃物を振り回しているのだからそれは当たり前といえば、当たり前なのだが、時代劇に限らず、日本映画がこれほどまでに首がとぶ作品を観たことがない。

それこそ『片腕マシンガール』や『東京残酷警察』のようなアングラ映画にはあったかもしれないが、独立系レーベルではなく、大手の角川と東宝がこれほどまでの描写にOKを出したこともかなり冒険的な作品だといえる。

徹底的なバイオレンス映画としたなら、それはそれで傑作になったかもしれない。

しかし、そこにBL要素やシュールな笑いが入ることで、唯一無二の北野武による「本能寺の変」が完成したのだ。

点数 85

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