ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

THE映画紹介『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』シャー・ルクとディーピカーの再共演!南インドの魅力が詰まった観光映画!!

THE映画紹介『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』シャー・ルクとディーピカーの再共演!南インドの魅力が詰まった観光映画!!

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』

作品情報

シャー・ルク・カーンとディーピカー・パードゥコーンの『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』に続き、2度目の共演作品にして、世界市場を視野に入れた超大作。タミル・ナードゥのある南インドに繋がるチェンナイ・エクスプレスに乗ったラーフル。たまたま手助けしたミーナと、家出したミーナを追ってきたミーナの父の手下たちと出会ったことで、途中下車するはずが、思わぬトラブルに巻き込まれいく。ラーフルとミーナは行動を共にするうちに、互いに惹かれていくようになるのだが…。

『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』基本情報

2013年製作/141分/インド
原題: Chennai Express

監督: 『勇者は再び巡り会う』ローヒト・シェッティ

出演 :

恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』『ディア・ライフ』シャー・ルク・カーン

恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』『パドマーワト 女神の誕生』ディーピカー・パードゥコーン

ダルバール 復讐人』ヨーギ・バーブ

『バーフバリ 伝説誕生』サティヤラージ

短評

インドを代表数する大スターのシャー・ルク・カーン主演の娯楽大作。

今作は南インド(特にタミル語圏内)の文化と自然、建造物といった、魅力的な部分を詰め込んだ、観光映画的側面の強い作品であり、インドの国内はもちろん、海外市場を本格的に考慮していて、北米でも196スクリーンで公開された。

幼い頃に両親を事故で亡くし、祖父母によって過保護に育てられてきたラーフル。はじめたお菓子販売の事業には成功し、それなりの富裕層ではあるが、過保護すぎて出会いがなく、すでに40歳という設定。

100歳の誕生日を1日前に亡くなってしまった祖父の遺灰を、ガンジス川とラーメーシュワラムに流して欲しいという遺言があったが、友人が40歳でも彼女もいないラーフルを心配してゴアに行く計画を立てていたことで、ゴアから流れる川がラーメーシュワラムと繋がっていると、無理やりこじつけるが、祖母を安心させるために、南インドに向かうチェンナイ・エクスプレスに乗り込み、途中下車して友人たちと合流する計画をたてていた。

このゴア州というのは、かつてはヒッピーの町としても栄えた場所であるが、現在は日本でいうと歌舞伎町のようなものだろうか...つまりクラブはもちろん、キャバクラや風俗のようなものが多くある「夜の街」ということだ。

映画のタイトルにもなっているチェンナイ・エクスプレスが登場し、チェンナイ・エクスプレスで行ける南インドの村をラーフルの目線から楽しむことができる。

都会育ちのラーフルの目線であることに意味があって、インド国内においても、特に若者が思っている「南インドが田舎臭い」というイメージを払拭しようと試みたことが、あえて誇張してしまい、風刺していると批判を受けてしまったようだが、そんな悪意があるものには、あまり感じられないし、魅力は伝わってくる。

シャー・ルクの演技が、世界市場を変に意識しているからなのか、いつもより誇張されていて、昭和の喜劇役者や全盛期のジャッキー・チェン映画のような雰囲気も感じられる。

BGMやギャグ漫画のような効果音などの使い方もかなり古典的であるが、あえてやっているような感じがしてならないが、今作の監督であるローヒト・シェッティは、『勇者は再び巡り会う』などの他の作品を観ても、なかなか古典的なギャグを盛り込んでくるだけに、作家性といえば、そうなのかもしれにない。

ローヒトのもうひとつの特徴として、やたらギャング抗争やカーチェイスを入れたがるという点だ。元スタントマンという経歴だけに、アクションへ拘りが強い監督ではあるが、特に車好きなのだろう。まぁ~車がよく転がるし、よく回る!!

劇中に「まるで『ライフ・オブ・パイ』だ」というセリフがあるが、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』はインドが舞台となっているが、カナダ人作家ヤン・マーテルが原作者であり、2012年に公開されたアメリカ映画である。あえて世界にわかりすいように、用いられた表現のようにも思える。

こういった点からも、世界市場への意識が強い作品であることは間違いないし、それもあってローヒトに監督のオファーがあったと思うのだが、近年では、グローバル化もさらに進み、当時の自国色をステレオタイプに発信していこうという意識から、自国色を全面に打ち出さない方向性に変化していったことがわかる。同じ世界市場を意識していても、かなり意識が変わってきたといえるだろう。

シャー・ルクとダブル主演となる、ディーピカー・パードゥコーンは『恋する輪廻』でも共演していて、今回が2度目であり、その後にも『ハッピー・ニュー・イヤー』で再共演を果たしている。

ディーピカーの場合もそうだが、特にシャー・ルクの場合は、1年に4、5本のペースで映画に出演していることもあって、他にもカジョールやラーニー・ムケルジーなどとも何度も相手役として共演をしているだけに、何だか「マルチバース」のような感覚がしてきてしまう。

今作は、アクション、ロマンス、サスペンス、コメディ、ダンスなどを詰め込んだ「マサラ映画」以外の何物でもないが、インド映画は基本的に歌唱シーンにおいては、プロの歌手の歌声に吹替えていることが一般的であり、今作も基本は、そのパターンであるものの、珍しくシャー・ルクとディーピカー本人による歌唱シーンがあることにも注目してもらいたい。

プロット自体も、関係ない人物が事件に巻き込まれていく中で、大きな役割を果たし、自分の分岐点であることに気づいていくという、どの国でも使い古された王道的なものである。

インドには、実に14もの言語があり、今回は同じインド内でも、ヒンディー語とタミル語圏内でも、大きな言語の違いがあるということを上手く利用していて、ボタンのかけ違いのような、おもしろさもある。(これも古典的といえば、古典的ではあるが...)

追手から逃げて、違う村でまた見つかって…という展開を数回繰り返していて、あからさまな感じがしてしまうのは難点ではあるし、とにかくこの監督の悪いクセというべきか、スローモーションが多い。スローモーションがなければ20分くらいは短縮できる内容である。

タミル語圏内の大スターといえば、スーパースターという称号をもつラジニカーントであり、本人は登場しないが、エンディングでは、ラジニカーントをリスペクトした曲が披露される。観ているときは、全然気にしていなかったのだが、シャー・ルクがやたらとサングラスをかけているのは、ラジニカーントへのリスペクトだったのだ。

これは日本も同様に「インド映画」のイメージが世界的に、『ロボット』のように、ラジニカーント主演の映画の印象が強いため、「インド映画」といっても「色々ありますよ」的なメッセージ性を世界に打ち出そうとしていながらも、ステレオタイプではあっても、インド映画のイメージを定着させたラジニカーントへの批判ではなく、リスペクトしているという姿勢でもあるのだ。

この意識を経て、近年のグローバル意識が強くなったインド映画(特にヒンディー圏)に変化していったことがわかる。

インドの映画界は、リスペクト意識が強く、だからこそ中国マネーが不安定な状況の今だからこそ、インドを資本パートナーに選んだ方がいいのではないかという、私の考えも間違っていないと自信をもって言えるのだ。

全編を通して流れるS.P.BalasubrahmanyamとJonita Gandhi、Vishal-Shekherによる「Chennai Express」も耳に残る名曲であり、ボリウッド映画の曲の中でも個人的にトップレベルのものだが、BGM的であって、ちゃんとした劇中のダンスナンバーとしては、使用されていないのが残念でならない。

祖父を演じているレーク・タンドンは、テレビドラマの監督としても知られている人物で、シャー・ルクが映画界に進出する前、テレビ俳優として活躍していた頃に、才能を見出したひとりとしても知られている。今作の設定同様に、シャー・ルクが業界に入ったころには、両親をすでに亡くしていたこともあって、業界としては育ての親でもあるという点から、少しリンクする部分があったりと、インド映画ファンも楽しめる要素が盛りだくさんの作品だ

2000文字以上の映画に関する記事書きます 宣伝から、批評までお客様のニーズにお答えします

THE映画紹介カテゴリの最新記事