
作品情報
手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーの悟。携帯を持たない謎めいた女性、みゆき。喫茶店「ピアノ」で偶然出会い、連絡先を交換せずに「毎週木曜日に、同じ場所で会う」と約束する。二人で積み重ねるかけがえのない時間。悟はみゆきの素性を何も知らぬまま、プロポーズすることを決意。しかし当日、彼女は現れなかった。その翌週も、翌月も……。なぜみゆきは突然姿を消したのか。彼女が隠していた過去、そして秘められた想いとは……。
『アナログ』レビュー

少し前の時代なら当たり前だったのに、今となっては非現実的な世界にすら思えてしまうほどに携帯電話というものが普及していることを改めて実感するし、携帯が普及しはじめる前後を知っている世代としては、懐かしくもあったりする。
携帯を持たないこと自体がミステリアスな女性を演出するものとして機能する時代になってしまっていることに複雑な心境になるが、本筋のあくまで純愛を描いているという点は、なかなかおもしろい部分はあるものの、設定を結末が上回っておらず、よくありがちというか、強引な展開過ぎる部分も補えきれていない。
ひと昔の前の「闘病もの」というべきか、困ったら最終的に誰かが病気になる、病気だった……という、2000年代前後にやたら連発したものの再来のような部分もあって、ストーリー構成もアナログという印象を残してしまっているのは残念でならない
互いを知っていく、人を知ることの楽しみに満ち溢れているともいえるのだが、まだ知らない点が多すぎる相手との結婚を結論づけるほどの説得力としては欠如しており、単純に「運命」と言ってしまえばいいのかもしれないし、そういったことが実際問題として無いとは言えないが、物語としての説得力はある程度持たせてもらいたかった。
全体的にすごくシンプルな作品で、タイトルが『アナログ』なのかせら、それも別に悪くはないのだが、もう少し演出の面でもう少し工夫をしてもらいたかった。
ただ演出といえば、キャラクター同士の会話シーンがアドリブのようになっていて、あえて雑編集のようなカット割りをしていることで、自然感を演出している点からも撮影風景の裏側にある楽しさがにじみ出ているようで、その点は今作の大きな魅力となっている。
点数 78

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