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この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)『グレタ ひとりぼっちの挑戦』プロパンガのはずがアンチな内容に?!製作の趣旨が理解できない…

この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)『グレタ ひとりぼっちの挑戦』プロパンガのはずがアンチな内容に?!製作の趣旨が理解できない…

作品情報

2018 年 8 月。15 歳の少女グレタ・トゥーンベリはスウェーデン・ストックホルムにある国会議事堂前で学校ストライキを始めた。気候変動対策を呼びかけるため、1 人で座り込み、自作の看板を掲げてリーフレットを配りながら通行人の質問に答える。毎週金曜日にストライキをすることから「Fridays For Future(未来のための金曜日)」と名付けられた運動は次第に注目を集め、スウェーデン国内のみならず、世界中の若者たちがグレタの考えに賛同するようになる。たった 1 人で始めたストライキは、数か月のうちに世界中に広がるムーブメントになっていった。グレタは父親のスヴァンテとともに、世界中の主要な会議や公式行事に参加して自分の言葉でスピーチを続ける。環境問題にあまり関心のない家庭に育ったグレタだったが、成長するにしたがってその生活がおかしいと気づき、食事や生活スタイルが変化していった。学校ストライキが波及し注目されるようになると、2018 年にポーランド・カトヴィツェで開かれた「COP24」や、2019 年世界経済フォーラム(ダボス会議)をはじめとする主要な会議やイベントに招かれ、気候変動危機を訴える。しかし、いくら危機を訴えても結論先延ばしの中途半端なメッセージを繰り返し、気候変動への警告を気にも留めない政治家たちに対する彼女の不満は高まっていく。ルーティンを保った生活や、孤独を好む彼女にとって、予測不能なスケジュールで活動し、世界中で認知されることは、大きな負担となる。評論家や政治家、気候変動否定論者からの虚言や SNS でグレタに向けられる殺害予告にまで及ぶ憎しみに満ちた言葉に、グレタの旅に同行する父・スヴァンテは大きな不安を感じ始める。しかしグレタは、世界の危機を伝えるという使命に燃えて行動を続ける。
2019 年 7 月。太平洋を横断し、アメリカ・ニューヨークに向かうため、再生可能エネルギーを電源とする「マリツィア 2 号」でイギリス・プリマスを
出発。2 週間の航海を経て、9 月に行われたニューヨークの国連気候行動サミットで、グレタは怒りを込めたスピーチを涙ながらに行い、世界に危機を訴えた。
“若者は 裏切りに気づき始めています。将来の世代の目は皆さんに向けられています。それでも裏切るなら私たちは決して許しません。世界は目覚め始めました。望まなくても変化は起きているんです“

先取り版とは?

私、映画評論家バフィーがマスコミ試写で、いち早く観て評論する先取り版です。通常回では、公開日もしくは前後に更新していますが、毎週10本以上の新作を観ていて、量が多く大渋滞状態ということもあって、先取りもしていきます。

ダメな作品はダメと言いますが、基本的にネタバレを垂れ流して、映画自体を観なくてもいいような評論はしません。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』レビュー

国連の温暖化サミットでの大人びた発言や、トランプ前大統領との討論から「グレタちゃん」ではなく、「グレタさん」と呼ばれることが多い、グレタ・トゥーンベリ。

いったい彼女は何者なのだろうか、彼女の真実に迫ったドキュメンタリー『グレタ ひとりぼっちの挑戦』が日本でも10月22日から公開されることが決定した。

 これは監督のネイサン・グロスマンの趣旨であり、あえてやっていることなのだが、今作の中で、彼女が議論として持ち出す「気候問題」に関しては、ほとんど扱われておらず、どういった目的で作られ映画なのかが、よく理解できないのだ。

 ひとりのティーンエイジャーとしての彼女に密着したというのはいいかもしれないが、それによって彼女が発信している、いわゆる「気候問題」の主張が「時間がない」「対応されてない」といったように、象徴的でしかなく、科学的エビデンスが全く語られない。

 実際には、もっと具体的なことを言っているはずだろうが、今作では、それがことごとく削ぎ落されていて、代りにバナナを「食べる、食べない」の不必要な父とのやり取り、原稿のスペルが「正しい、正しくない」でイライラしている様子は普通の女の子でしかない。

 環境問題に対して、専門家顔負けで、反対派の団体や組織を論破できるような、徹底的な問題提示の中に垣間見える、普通の女の子の姿なら、ギャップとしての価値があるというものだが、終始そんなシーンの連続である。

 彼女に賛同する者たちも、環境問題というより、インフルエンサーや環境活動家たちのアイコンとしての彼女に影響を受けて、デモに参加しているようにしか感じられない。

 アーノルド・シュワルツェネッガーやフランスのマクロン大統領といった著名人も登場するものの、印象操作として彼女が利用されている

 仮にそういった意図がなかったとしても、そうにしか見えない映像からは、もはや「アンチ・グレタ」にすら感じずにはいられなのだ。

確かにそういった意味では、日本のタイトル「ひとりぼっちの挑戦」というのも納得がいくというものだが、

 彼女に寄り添った内容にしたいのであれば、彼女の掲げる「気候問題」を決定付けるような説得力が欲しいというのに、終始フワフワしていることで、今作で浮き彫りになるのは、だだの環境問題に関心があった子供を、周りの欲にくらんだ大人や存在を利用しようとしている左翼団体である。

 ロシアのドキュメンタリー作家・セルゲイ・ロズニツァがスターリンの死を国民が悲しんでいるかのように演出し、プロパガンダとして撮影された、葬儀映像を編集して世に出すことで、一周回って、独裁政権の滑稽さを風刺として『国葬』を発表したのとはまた違っていて、製作者が、無意識に「これでいい」と思っているのだとしたら、非常にポンコツなドキュメンタリーでしかない。

 そもそもドキュメンタリーが真実を発信するものではないことを知っておいてもらいたい。例えば動物の生態を追ったネイチャー系だったり、ミュージシャンの伝記のようなものだったりと、製作者自身の意見や主張を反映させる余地のないものとは別に、政治や社会問題などを扱った作品の場合は、ある程度の偏りがあり、それを「味」として楽しむもの。

  環境系の作品も『不都合な真実』や『グリーン・ライ ~エコの嘘~ 』などのように、様々な意見や見解によって構築された作品も山のようにある。『パンケーキを毒見する』では、菅政権への批判や偏った見解に満ち溢れていたし、最低映画賞こと通称ラジー賞を受賞した『Absolute Proof』も2020年の大統領選挙の不正投票を取り上げていて、陰謀論丸出しな映画である。

 しかし、意見の偏り悪いこととも限らない。偏っているとはいっても、それは作り手の主張であり、それを発信するのもドキュメンタリーのひとつの役割であるからだ。

 一見、偏りがないというのは、良いことに聞こえるかもしれないが、ドキュメンタリーに関しては別問題。極端な称賛でも、極端な批判でもない、非常に中途半端なバランスの中で、何が正しいか間違っているかの議論にもならない。

CREDIT

出演:グレタ・トゥーンベリ、スヴァンテ・トゥーンベリ、アントニオ・グテーレス、エマニュエル・マクロン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ドナルド・トランプ
監督・脚本:ネイサン・グロスマン
製作:セシリア・ネッセン、フレドリク・ハイニヒ
編集:ハンナ・レヨンクヴィスト、シャーロット・ランデリウス
音楽:レベッカ・カリユード、ヨン・エクストランド
脚本:ペール・K・キルケゴー、ハンナ・レヨンクヴィスト

2020年/スウェーデン/ドキュメンタリー/101分/ビスタ/5.1ch/原題:I AM GRETA 日本語字幕:石塚香 配給・宣伝:アンプラグド © 2020 B-Reel Films AB, All rights reserved.

2021年10月22日(金) 全国順次公開

点数 66

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