
2015年のアメリカ映画『マイ・インターン』をオリジナル版のワーナーが積極的に関わるかたちでインドリメイクされる『ザ・インターン』は2021年の公開を目指して企画がされていたが、『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』のディーピカー・パードゥコーンと『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』では校長役を演じていたインドのベテラン俳優で、『若さは向こう見ず』でディーピカーと共演したランビール・カプールの父としても知られるリシ・カプール主演で予定されていた。
しかし、新型コロナウイルスの影響とリシ・カプールが2020年4月に白血病によって亡くなってしまったことなどが重なり、延期が続いていたが、代役として同じくインドのベテラン俳優アミターブ・バッチャンが代役を務めることで企画が再始動することとなった。
バッチャンはバズ・ラーマンがリメイクした『華麗なるギャッツビー』でハリウッドデビューしたものの、その後アメリカ進出は上手くいかなかった。一方『トリプルX:再起動』でハリウッドデビューを果たしたディーピカーもその後、アメリカ映画に出演していない。
年間で4、5本も映画に出演しているだけあって、単純にスケジュールの都合かもしれないが、アメリカで活躍しているインド系俳優は、ほとんどがイギリス系インド人やアメリカ出身者が多い。
インドの俳優と勘違いされがちな『どん底作家の人生に幸あれ!』『ホテル・ムンバイ』のデヴ・パテルも実はインド系イギリス人。インドから本格的に進出できたのは、プリヤンカー・チョープラーぐらいではないだろうか。
テレビドラマ『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』の主演も務め、『マトリックス4』にも出演するプリヤンカーも、ブレイクした背景として、ニック・ジョナスの妻という立ち位置で露出が多かったという点があるように思える。
しかし、今のアメリカ映画市場にとって、インド俳優がアメリカでブレイクするのは、決してマイナスではないのだ。
映画製作本数の多い国というのは、中国なども同様に、リメイク作品がある一定の量を占めていて、今作以外にも多くのアメリカ、イギリス、最近では韓国映画などがリメイクされている。
リティク・ローシャン主演の『Bang Bang!』もトム・クルーズ主演の『ナイト&デイ』のリメイクであるし、歌手のカイリー・ミノーグが出演して話題になった『BLUE』もジェシカ・アルバ主演の『イントゥ・ザ・ブルー』のリメイクだ。
『フォレスト・ガンプ 一期一会 』『ブルース・オールマイティ』『ボーン・コレクター』『マイ・ボディガード』『ランボー』『ミニミニ大作戦』などといったハリウッド大作だけではなく、『アメリカン・ピーチパイ』『トラブル・カレッジ/大学をつくろう!』などのティーン・ムービーも多くリメイクされているし、さらにレイチェル・リー・クック主演の『11:14』のようなインディー系作品にも手を出している。
今まではアメリカの映画会社は、リメイク権を売ることで、一定の収益を得ていた。一方で自国の映画に資金提供してくれるスポンサー国として中国が名乗りを挙げることが多かったのだが、近年の過剰な検閲問題や武漢ウイルス騒動で中国マネーを期待できなくなってきただけに、次のスポンサー国を探す必要があるという問題に直面しつつある。
例えば財力でいうなら、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が『サムライスピリッツ』『餓狼伝説』などで知られるSNKを買収したほど、サブカル好きのサウジというのもあるが、サウジの場合は、日本と共同製作したアニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』を観てもわかるように、宗教色や自国色が強くなる傾向にあって、中国検閲と変わらなくなってしまう。
となると、もともと「マサラ映画」のルーツがハリウッド黄金期のミュージカル映画といわれているほど、アメリカ映画へのリスペクトが強く、資本力もあるインドと協力関係になっていく可能性が高い。
もちろんインド内でアメリカ映画をリメイクする場合は、自国色を強く出している。しかし、これは勝手な個人的見解ではあるが、資本提供先には口出ししない感じがする。そこにはアメリカ映画に対するリスペクトと富裕層こそ英語文化への憧れが強いからだ。
リメイクの逆輸入からの、インド俳優陣をアメリカ側に自然に引き入れようとしているのかもしれない。
↓ちなみに『Dil Bole Hadippa!』は、日本では未公開スルーとなったアマンダ・バインズ主演の『アメリカン・ピーチパイ』をリメイクしたもの。ラーニー・ムケルジーファンであれば、おすすめの1本!!日本でも公開してもらいたい。

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