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コラム:ボリウッド映画のミュージック・ビデオで観る、世界規模のコンテンツになり つつあるヒンディー・ミュージックの進化!!

コラム:ボリウッド映画のミュージック・ビデオで観る、世界規模のコンテンツになり つつあるヒンディー・ミュージックの進化!!

ヒンディー・ミュージックと聞くと、どこか古臭かったり、民族音楽のよう なイメージが強いのではないだろうか。

そういったイメージがある人こそ、↑ をまず観てもらいたい。

これは、今インドで人気の双子アーティストで、ボリウッド映画にも多くの 楽曲を提供しているカッカー姉妹のミュージック・ビデオだ。全く古さを感じ ないどころか、世界で通用するクオリティである。

もちろん、日本にも民謡や演歌があるのと一緒で、今もそういった古典的な 音楽も多く存在しているのは事実だ。

しかし、近年の急激なデジタル化とグロ ーバル化によって、海外から多くの要素を取り入れ、独自の発展を遂げている。 その証拠に、『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(2019)『グレート・インディア ン・キッチン』(2021)の舞台になった、極端な南インドのケーララ州のド田舎 においても、スマホが普及し始めている。

5G も 2022 年から 2023 年にかけて実装され、更に極端な田舎においても 2025 年までに光ファイバーが一般化されることがわかっており、インド全体のデジ タル化は目前である。

デジタル化とグローバル化が、どうヒンディ・ミュージックの進化に繋がっ ていったかを、いくつかのミュージック・ビデオを例に出して解説していこう。

ちなみに、ボリウッド映画の進化とヒンディー・ミュージックがどう結びつ いていくかという問題についてだが、ソニーや T-Series、ヤシュ・ラージ・フ ィルムズといった音楽レーベル兼映画会社が製作に入っていることもあって、 主題歌や劇中歌は、映画と切り離してもミュージック・チャートで勝負できる クオリティを目指しているからだ。

そして急激な進化が始まったのは、90 年代の終わり頃である。 90 年代後半になってくると、ボリウッドも世代交代になるのと同時に、映画 や音楽に対しての考え方が変わっていった。

↑これは映画『何かが起きてる』(1998)の劇中歌「Koi Mil Gaya」という曲 だ。舞台が現代になっていることもあるし、まだまだ古臭い感じもするかもし れいが、民族臭漂う作品ばかりだったボリウッドに、一気にグローバリズムが 流れ込んできた。

今作で監督デビューを果たしたカラン・ジョーハルは、海外イズムに拘った 監督であり、その後、画期的な作品を続々と制作するヒットメイカーとなって いく。カラン・ジョーハルだけに限らず、90 年代に助監督や振付師などの補助 の立場から監督になっていった世代は、グローバリズムを積極的に取り入れる 者が多い。

それには理由があって、インドでは 70~80 年代にディスコブームが起こり、 マイケル・ジャクソンやドナ・サマー、『フットルース』(1984)『サタデー・ ナイト・フィーバー』(1977)といったダンス映画が人気を博したこともあり、 90 年代から世代交代していった世代は、そういった海外音楽やエンタメへの憧 れとリスペクトが極端に強いのだ。

2000 年代に入ると、曲名に”ディスコ”や”パーティー”と入ったものが量 産されることになる。これは世界的なクラブブームも後押しして、若い世代を 取り込みつつ、中年世代も取り込むといった、幅広い層をターゲットとしたこ とで、あえて”クラブ”ではなく”ディスコ”としているのだ。

たとえ明日が来なくても』(2003)の「It’s The Time To Disco」のよう に、正に 2000 年代のクラブブームの現場を切り取ったようなものもあれば、 『アメリカン・ピーチパイ』(2006)のヒンディーリメイク『Dil Bole Hadippa』 (2009)の「Discowale Khisko」の様に、民族音楽とミックスした独特なサウン ドを生み出す実験的試みもされてきた。

そして 2010 年代に入ると、アーリヤー・バットヴァルン・ダワンシッダ ールト・マルホートラパリニーティ・チョープラーさらに新たな世代の俳優た ちが、続々とデビューした。

この世代は、母国語のように英語の教育を自然に受けていた世代であって、 中には、逆にヒンディー語の方がわからないという者もいるほどだ。

それに加え、インターネットとスマートフォンの急激な普及によって、一気 に海外の情報が手に入るようになっていった。

2010 年代に流行ったヒップホッ プ、ラテン、テクノ、K-POP など、ワールド・ミュージックにリアルタイムに リンクできるようになったことで、他国のトレンドを積極的に取り入れた曲が 多くなっていった。

現在も進行形で色濃く残る女性蔑視の強いインド。

保守的な村では、生理に なった女性を小屋に閉じ込めるといった風習が残っていたりもするが、ヒンデ ィー語圏内では、女性解放運動が盛んとなり、女性の強さが全面に出た作品が 多くなったことと、タブーとされてきたキスや性描写などの表現の規制も緩和 されていったこともあって、セクシーなダンスや激しい動きを取り入れた曲も 多くなった。 その影響は、若者世代向けのものに限らず、中間層に向けた作品も受けてい った。

今まではインド国内の内々で楽しむ映画や音楽だったものが、グローバ ル化とデジタル化の波を受け、さらに Netflix などの動画配信も普及し始めた ことで、外に出しても恥ずかしくない作品を作りたいという意識が急加速さ せたのだ。

例えばプリヤンカー・チョープラー主演の『ガンデイ』(2014)の「Asalaame-Ishqum」は、明らかにクリスティーナ・アギレラ主演映画『バーレスク』 (2013)の影響を受けている。『フラッシュダンス』(1983)や『シカゴ』(2002) の要素も取り入れはいるものの、どこからどう観ても、着想元であることがわ かる。

Netflix 映画『ドライブ』(2019)の「Karma」もバズ・ラーマン監督作『華麗 なるギャッツビー』(2013)から着想を得ていることがわかる。ボリウッドはバ ズ・ラーマンへのリスペクトも強く、『ハッピー・ニュー・イヤー』(2014)の 中でも『ムーラン・ルージュ』(2001)に似たダンスシーンがある。

これは決してパクりとは違う。海外の要素を取り入れつつ、自国のものに変 換していくのは、どこの国もやっていることである。

ディズニーの真似から入って、今の日本のアニメ界があるように、ブルー ス・リーのカンフー映画ブームに便乗して、千葉真一の「殺人拳」シリーズや 『女必殺拳』が誕生したように、日本に溢れている作品も、ルーツを辿れば、 自国のものばかりではない。

ラテンでもヒップホップでもない、海外イズムを取り込み、独自の進化を遂 げてきたヒンディー・ミュージック。すでに UK チャートにも入るようになって きており、世界的ビッグコンテンツになるのは、目前なのだ!!

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