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コラム:インドで巻き起こるホラームーブメント!多様な作品が飛び交うインド製ホラーに注目!!

コラム:インドで巻き起こるホラームーブメント!多様な作品が飛び交うインド製ホラーに注目!!

日本のインド映画の専門家といわれる人たちも、映画関係のメディアも、表面上のランキングに入ってくるような映画をちょこちょこと扱うだけで、最新トレンドについて全く触れておらず、インド映画の現在地、実情を専門家が触れないのは、正直どうかと思うところだ。

それはさておき、劇場公開作品もそうだが、配信作品でもホラーやスリラー作品の新作が毎週のようにリリースされていて、こんなあからさまなホラームーブメントというのも珍しいほどに無視できない現状にある。

NetflixやAmazonプライム、Disney+、ZEE5などの配信サービスを見ても、スリラーやホラーの量が年々増えてきていることがわかるほど。

そもそもなぜ、インドでホラームーブメントになっているかというと、大きな理由としては、やはりデジタル化、配信サービスの普及による多ジャンルの需要増加としか言いようがない。

インドにホラー映画が無いわけではないし、昔から定期的に制作されている。全部が全部とはいわないし、ベンガル語映画にはとにかく暗い映画も多く制作されている。ところが大衆向けに制作されたホラーは変な要素が入ってきてしまう。

変な要素とは、コメディ要素のことだ。本格的なホラーを目指した『Amavas』であっても、ミュージカルシーンがいきなり入り、吉本新喜劇やドリフのようなコテコテの効果音が多様され、コメディリリーフとしか思えないキャラクターが恐怖にいざなおうとしてくるのだから、すでに冒頭から躓いている。

もしくは『ゴーストバスターズ』を意識した『Phone Bhoot』のように、最初からコメディ色の強いホラーアドベンチャー としてスタートしているかだ。

その原因として考えられるのは、インド国内では中国映画やドラマがケーブルテレビを通して1990年代から観られる環境であったことから、ホラーのイメージが「霊幻道士」や「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」のような、コメディ色の入ったホラーとなってしまい、それがスタンダードとなってしまったことにあるのではないだろうか。

ところがNetflixやAmazonといった外資系の配信サービスがインドでも普及し始めたことによって、様々な国の作品が観れる環境にあり、人々のホラーに対する考え方自体が変化したのだ。ちなみにそれは、ホラーだけに限らず他のジャンルにも言えること。

そこで人気を博しているのが、「13日の金曜日」や「悪魔のいけにえ」といった、スラッシャー、スプラッター映画というよりは、「死霊館」や「イン・シディアス」シリーズでお馴染みのジェームズ・ワンやブラムハウス作品などのスーパーナチュラル系ホラーである。

配信サービスが普及する前から、先陣をきって制作されていたスーパーナチュラル系ホラー「1920」シリーズの1作目は2008年公開と、実は『死霊館』よりも早く制作されている。

おそらくその頃は、中国もジャパニーズホラーを意識した作品を多く制作し始めたのと、台湾や韓国もそういったスーパーナチュラル系作品が増えてきたことから、影響を受けていたといえる。

ジェームズ・ワンの作品自体のルーツが元を辿れば、ジャパニーズ・ホラー、アジアン・ホラーに行き着くだけに、それをブラッシュアップしていくとジェームズ・ワン風に辿り着くというのは、自然な流れなのかもしれない。

実際に「1920」は、シリーズが増すごとに、ジェームズ・ワン色が強くなっている。

6月に公開された最新作『1920 Horrors of the Heart』は、ジェームズ・ワン色に加え、『エクソシスト』の要素も増している。

それに加え、近年はインドの劇場でも「死霊館」シリーズや『ミーガン』なども公開されているのだから、その流れを飛ばしていきなりジェームズ・ワン、ブラムハウスという若い映画人も多いはずだ。

ちなみにスーパナチュラル系ホラーしか流通していないかというと、別にそうではなくて『スクリーム6』や『死霊のはらわた ライジング』も公開されているのだから、インドではスーパーナチュラル系の方が需要がある証拠だといえる。

ヒンディー語やタミル語でもリメイクされたカンナダ語映画の『危険なUターン』もそうだが、今年に入ってからは、グジャラート語映画『Vash』はインド中で話題となり、すぐさまヒンディー語リメイクが決定したほど。

6月に劇場公開され、先日Netflixでも配信が開始された(日本は未配信)『アシュヴィンズ』はインドでは珍しくPOV映画となっていて、かなり意欲的な作品。そもそもPOVというジャンル自体が好みは分かれるかもしれないが、クオリティは非常に高い作品だ。

このようにすでに各地域でもホラームーブメントというのが起きており、今後インドホラー革命というのが、国を跨いでイギリスやアメリカで起こる可能性も十分に考えられるということだ。

さいごに個人的な感覚としては、南のカンナダや西インドのホラーの方が、無駄な要素が少なく、直球のホラーという感じがしている。どうしても大衆をターゲットとしたボリウッドが制作すると、エンタメ性が強くなってしまうため、恐怖という部分ではかなり薄められてしまっている感じがしてならない。

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