9月5日放送された「踊る!さんま御殿!!」のなかで、タミル映画『SUMO』に出演した田代良徳が、「インド映画は恋愛シーンが描けないため、踊りで表現する」と、あたかもインド映画の全作品がそうであるかのように語っていたが、これは大間違い!!
そもそも『SUMO』という作品自体、恋愛シーンを入れるような作品ではない。
ただ他作品において、実際に恋愛シーンが描けないいくつかの事情というのも実際にあるが、それはあくまで「作品による」ということ。
まずは宗教上の問題。キスシーンは結婚前の性行為を想像させるためカットされたり、している風に処理されることもある。
これは2000年代以降の韓国ドラマにも一部みられた。明確に禁止されているわけではないが、キスシーンが婚前性交を連想させるという視聴者の意見を反映していたからであるが、これも大衆的な作品に限ったことであった。
いわゆるスターシステムといわれる、俳優ありきで制作される作品においては、大スターが主演の作品では、そのスターは「みんなのスター」という認識から、あえてキスシーンなどを外すこともある。
そして大きな理由は、単純にレーティングの問題なのだ。
インドでは映画というものが、家族で行くイベントみたいな感覚な部分が最近まであったこともあり、家族で観て気まずくなるようなシーンは入れない方がいいという考えのもと、恋愛シーンをダンスで処理するということはよくあったのだが、単純に考えてもらいたい。
例えば日本でもファミリー層をターゲットとした作品にがっつりとした恋愛シーンがあるだろうか??
ディズニーやマーベルの作品などもそうだが、客層に合わせて、そういったシーンは最低限に抑えられている。
2000年代以降のインド映画界を変えてきた映画監督のひとりでもあるゾーヤー・アクタルが『人生は二度とない』や『鼓動を高鳴らせ』のなかでキスシーンを普通に入れていた。
インド映画における「恋愛シーンを描けない」という理由は、それと何も変わらない。つまり場合によるということだ。
ダンスシーンが入るのは、ほとんどの場合、特に最近では音楽のプロモーションという理由が大きい。製作会社が音楽レーベルであったりもすることから、ダンスシーンを入れることで、それをそのままMVとして配信することで映画も音楽も宣伝できるという利点からだ。
逆に音楽レーベルが絡んでいなかったり、小中規模の作品では、そういったプロモーションの必要がない、もしくは予算的にできないことから、全く無いものも多い。
これは大スターが出演していて、レーティング的にも幅広い年齢層が対象の作品だった。……だからそういった作品でもできないことはないのだ。
新型コロナのパンデミックやデジタル化、配信サービスの普及などでインドにおける「映画」に対する概念が大きく変化したこともあり、ターゲットが絞られ、レーティングが高めに設定されたドラマや映画が多く制作されるようになったことで、今やインド映画・ドラマのラブシーンは、他国と何ら変わりない。
それどころか大衆系映画でずっと抑えられてきた反動のように、自由度の高い配信系作品では、極端なまでに過激度を増してきている。
ちなみにインド映画・ドラマにおける性描写の変化に関しては、「F〇UK!連発のインドドラマ『フォー・モア・ショット・プリーズ!』から見る、インドの変化する性描写」のなかで詳しく触れている。

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