90年代から2000年代には、『アメリカン・パイ』や『シーズ・オール・ザット』などのティーン向けムービーが劇場での存在価値を示せていたが、近年は脇に追いやられて劇場公開はスルーされるということが多くなっており、現在製作されていたり、すでに完成された作品はハイティーン向けはNetflix、ローティーン向けはディズニー系の配信作品としてリリースされることがあたりまえとなりつつある。
ネット世代である現在の10代~20代には、劇場で映画を観るという価値観が失われつつあるだけに、劇場公開するメリットが全くと言っていいほどないという悲惨な現状が背景にあるのだ。Netflixで配信中の映画『エンド・オブ・ハイスクール』では『ケイティ・キーン』『ファンタジー・アイランド』のルーシー・ヘイル、『僕のワンダフル・ジャーニー』『ポラロイド』のキャサリン・プレスコット、『ベラのワンダフル・ホーム』『X-MEN ダーク・フェニックス』のアレクサンドラ・シップ、『リトル・マーメイド』『クレイジー・リッチ!』のオークワフィナという今の映画界を代表する若手女優が4人出演する作品でさえも劇場公開は見送られてしまっている。
この『エンド・オブ・ハイスクール』は、今のティーンの気持ちを率直に反映していると言えるほど、世の中から一歩引いてみせた作品である。高校の卒業年になった女子グループが自分たちの居場所や将来の不安が込み上げてくるという内容。
ティーンムービーらしい、わちゃわちゃしたシーンもあるには、あるのだが…どことなく寂しい。好きだったかもしれない相手が突然死んでしまい、プロムの準備に没頭することで好きだったかもしれない相手のことや、プロムが終わってしまった後のことを考えないようしている姿から、ティーンならではの苦悩が痛いほど伝わってくる。↑こんな寂しい表情のルーシー・ヘイル観てられない!!
単純にティーンムービーとして扱ってしまうのは、勿体ない内面を容赦なく描いた作品なだけに、これこそ劇場公開してもらいたかった。
コメディ映画やアラサー、アラフォーを対象としたエイミー・シューマー、レベル・ウィルソンなどが出演する女性向けコメディも不発が続いており、Netflixに移行されることが多くなっているという状況もあり、コメディ映画自体がかつてないほどの氷河期を迎えていると言ってもいいだろう。
かつては劇場公開されればヒットしていたはずの、アダム・サンドラーの新作映画は全てNetflixの配信映画となっていて、時代の変化によって自ら避難しているという状況である。
エディ・マーフィも『ビバリーヒルズ・コップ4』はNetflix映画として製作される方向で話を進めている。
安定的な収益を回収できる続編、リメイク、アメコミ映画が劇場公開枠を占めてしまっているという、ハリウッドのネタ切れ問題の影で犠牲になっているジャンルは多いのが現状である。
ティーンムービーを映画館で観れた2000年代のような状況は再び訪れるのだろうか…
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