先日、HBO Maxと一部劇場公開を予定していたDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の新作『バットガール』の公開中止が発表された。
理由が明確に発表されておらず、様々な憶測が飛び交っているが、これはプロモーション戦略ではないだろうか。
つまり前評判が微妙な作品を一旦引くことで、メディアがそれを取り上げ話題になる。公開中止を受けたファンは、『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』のように署名活動やSNSで活気づくことが目的とすれば、少々卑怯な戦略には思えるが、ビジネスとしてはアリな戦略である。
ドラマも『ルシファー』や『スーパーナチュラル』のように、一旦中止を発表した作品が結果的に復活することで、再評価されるという流れを繰り返しているワーナーだけに、今回もそうではないだろうか。
『バットガール』はすでに関係者試写が行われており、いくらかの手直しは必要としても合格点が出たとされていただけに、駄作でヒットを狙えないからという理由ではないし、そもそも『バットガール』という作品は、HBO Maxがメインの作品として制作されている。つまり『アクアマン』や『ブラックアダム』『シャザム!~神々の怒り~』のように、劇場収益を目的としたものではない、テレビ映画と劇場映画の中間的作品だ。
『バットマン』『バットマン リターンズ』でブルース・ウェインことバットマンを演じたマイケル・キートンも出演することや、DCEUでは初となる、トランスジェンターのキャラクターが登場することでも話題となっていた。
『フラッシュ』によって改変されるであろう、新たなDCEUの世界観に繋がる作品としても注目されていたはずだ。
劇場公開作品と同様の収益は望めないとしても、それは制作段階からわかっていたことだし、先日制作中止が発表された『ワンダーツインズ』のように、せめて撮影する前に決定を下すべきである。
つまり「もっとDCにも注目してもらわないと、企画が中止になりますよ」という危機感を煽る側面もあるような気がしてならない。
もし、そもそものHBO Max映画のプランラニングに問題があって、今更になって制作費と収益が釣り合わないというような単純な経済的理由だとすれば、他に制作予定の『ザターナ』『ビクセン』『スーパーガール』『ジャスティス・リーグ・ダーク』『ブラックキャナリー』なども中止になる可能性が高くなってくる。
そんな見切り発車のようなことを一流企業がするだろうか……。
マーベルがDisney+で世界観を拡張することに成功している中で、遅れをとっているワーナーだけに、すぐにでも後に続きたいという意識であるはず。今回の公開中止報道が、単にシリーズ展開に拍車をかけるパフォーマンスであるのならば良いのだが、一番恐ろしいのは、CEOの交代によって、ワーナー自体の経営方針自体が一新される可能性についてだ。
ワーナーはディスカバリーとの合併によって、重役が次々と辞任するという事態が発生している。
ワーナーメディアのCEO、ジェイソン・キラーとワーナー・ブラザースのアン・サーノフ会長兼CEOが合併を前にして辞任を発表していることから、経営方針自体が大幅に変わったという可能性もあるということ。
新たなCEOには、ディスカバリー側のデビッド・ザスラブが就任しており、その影響やディスカバリー側の戦略として、HBO MaxのDCの中間的作品を見直す傾向にあるとすれば、DCだけに限らず、HBO Maxの企画として動いているオリジナル映画やドラマシリーズも今後危険な状況になるというこだ。
劇場映画に関しては、前向きな考え方があるようで、『フラッシュ』や『ザ・バットマン2』『ジョーカー2』などの作品が中止になることはないとしても、企画段階で不安要素の高いものは切り捨てられる可能性や、配信作品とテレビ作品は大幅な改変がある可能性など、経営者交代による不安は尽きない。
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