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この映画語らせて!ズバッと評論!!『PATHAAN/パターン』SRKが前線に復帰!”スパイ・ユニバース”と”新ボリウッド”の幕開け!!

作品情報

2019年、パキスタンの将軍カーディルはインド政府がJK州の自治権を無効かしたことを知り、インドへの攻撃を計画。未知の集団Xというテロ組織を率いるジムに連絡をする。実はジムはかつて、インドの諜報機関RAW所属の最強のエージェントだった。しかし、ある事件で国から裏切られ、妊娠中の妻を殺され自らも瀕死の重傷を負ったのだ。生き残ったジムは母国インドに憎しみを抱き国家を破滅させるためにテロ組織を作っていた。そしてカーディルとジムは、共に憎むインドへ対するテロ計画を企てる。2020年、RAWに所属するエージェント、パターンはミャンマーで作戦中に負傷し大けがを負った。しかし、脅威の回復力で現場復帰を果たすと共に、負傷や心身に傷を負い一線を退いた元エージェントたちを呼び集め、JOCRというRAWの内部組織を立ち上げるが……。

『PATHAAN/パターン』レビュー

日本でもついに公開されたシャー・ルク・カーン主演の『パターン』ではあるが『K.G.F:Chapter 1&2』や『ブラフマーストラ』のときよりはまだマシで、今回は辛うじてオンラインのみのマスコミ試写はあったものの、こういったアクション大作はオンライン試写で観るものではない。

ある程度、宣伝に予算をかけてスクリーンでマスコミや一般客に試写を見せるべきだっただけに、PRの部分からすでに躓いているものの、それ以上に残念なのはキング・オブ・ボリウッドの作品が公開されるというのに、冒険をすることができないという点だ。

規模的には『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』や同日に公開された『ホーンテッドマンション』と同等もしくは、それよりも上の規模で制作されている作品としては、かなり寂しい扱われ方ともいえる。

インド映画の日本における現在地を考えると、そこまでの冒険ができないというのはわかるが、配給会社自信がインド映画、シャー・ルク・カーン主演映画というものにそこまでの投資意欲をもっていないというのが悲しいのだ。

お決まりの配給会社しかインド映画を買い付けないという現状も『RRR』のヒットがあったなかでもほとんど変化していない。それを踏み切ることにこそ、インド映画だけに限らず、日本の映画市場の未来があるのではないだろうか。

無難、無難に『RRR』や『バーフバリ』に頼り過ぎている部分が見えてくるのが悲しくてたまらない。……というのは、作品の外側の問題。

今作自体は、『バンバン!』『 WAR ウォー!! 』など、ハリウッドというか、トム・クルーズ作品に憧れを抱いていることが作品からにじみ出ているシッダールト・アーナンドの新作らしい娯楽アクション作品となっていて、とても魅力的な作品に仕上がっている。

今回は、実際に「ミッション:インポッシブル」シリーズのスタントマンであり、『トップガン マーヴェリック』や『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のケイシー・オニールがアクション監督として参加していることもあって、明らかに「ミッション:インポッシブル」を意識したものとなっている。

ロシアでの列車を使ったアクションシーンも『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』にそういったシーンがあると知っていたからこそ取り入れたものにも感じられるのは気のせいだろうか。なんだかよくわからないものを本気で奪い合ってる点やツッコミ所に関しても似ている気がする。

インドの憲法370条やカシミールを巡ってのインド・パキスタン問題は様々な作品で描かれてきたし、それは社会派な作品でも娯楽作品でも共通のテーマともいえる。

ただ描き方としては、インドの人々もパキスタンの人々も、元は同じ民族。それぞれが対立では平和を願っていて、一部の政権や武装勢力、テロリストがそれを悪い方向に向かわせている。宗教や人種はあくまで個性のひとつでしかなく、人間は人間、悪は悪というような『マイネーム・イズ・ハーン』的アプローチな無難な切り口として多様されていて、それは『スーリヤヴァンシー/ジャスティス・スクワッド』においても同様であった。

シャー・ルクが4年ぶりに主演を務めたということと、新型コロナのパンデミックによる影響によって、滞っていたボリウッドの話題作がこれから続々と公開されるという流れの先陣を切った作品ということもあって、インドの観客たちはメタ的なメッセージを受け取り、歓喜したに違いない。

ポストクレジットシーンで、パターンとサルマン・カーン演じるタイガー「まだ若手には任せられない」というセリフもあるが、これもまだまだ現役だというメタ的な意味を含んでいるのだろう。

そんなタイガーが主役の『タイガー 伝説のスパイ』『Tiger Zinda Hai』、リティク・ローシャン演じるカビールが主人公の『WAR ウォー!!』は、一応世界観を共有した「スパイ・ユニバース」とされており、なんとなく話が繋がっているようにふわっとされていた。

しかし今作をもって本格始動。タイガーがゲスト登場するのはもちろんのこと、セリフのなかでカビールの存在に何度も触れている。

そもそも今作のヴィランであるジムがカビールの元同僚という設定があることからも、回想シーンでカビールが登場する予定であったが、タイガーの登場が霞むという理由から、今回は残念ながら見送られてしまった。

今後も『タイガー3』や『タイガーVSパターン』、『WAR ウォー!!2』と続いていくだけに、パターン、タイガー、カビールが顔を合わせるのもそう遠い未来ではないのかもしれない。

ただ、そうなってくると、ヴィランの問題も発生してくる……。

シャー・ルクは今後「アベンジャーズ」におけるキャプテン・アメリカ的な立ち位置となっていくような感じがしているものの、ヴィランがテロリストというのも微妙なところで、超人のようなヴィランを設定するのかの境界線に立たされることになるかもしれないが、今後の展開は慎重に考えていってもらいたい。

点数 85

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