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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ブラフマーストラ』ヒンドゥー神話とアメコミヒーローの融合!実夫婦共演が”愛の力”に説得力をもたらす!!

作品情報

ムンバイに暮らす天涯孤独の青年シヴァは、ダシェラ祭で出会った女性イーシャと恋に落ちる。それと時を同じくして、見知らぬ科学者が何者かに襲われ、ある物体を奪い去られるという不思議な幻視を見たシヴァは、科学者がその名を口にしていた芸術家のアニッシュ・シェティを探すことに。バラナシでアニッシュに出会うことができたシヴァとイーシャだったが、そこには幻視の中で科学者を襲ったジュヌーンらの姿があった。アニッシュが食い止めることで辛くも逃げ切ったシヴァたちは、すべてを知るというグルの寺院へと向かう。そこで追っ手が手に入れようとしているのは、神々から授かった武器“アストラ”と、その中でも最強の武器とされる“ブラフマーストラ”であることを知らされる。ブラフマーストラが目覚めることで世界は滅びてしまう…。しかもシヴァはそれらの武器を守護する役割を担う秘密組織“ブラフマンシュ”に属していた人物の息子であり、偉大なる火の力“アグネヤストラ”を宿していると告げられる。果たして、シヴァは自らの運命を受け入れ、世界を救うことができるのか……。

『ブラフマーストラ』レビュー

『Wake up Sid!』『若さは向こう見ず』のアヤーン・ムカルジーが8年以上かけて制作した……とは言っても、実際に撮影やらはここ3、4年といったところで、間にランビールがスケジュールが合わなかったり、新型コロナなんかがあったりで実質的には2年ちょっとぐらいで完成させたという感じだろうか。

完成までにかなりの回り道をした作品ではあるが、2022年のヒンディー語映画の中ではトップ1の成績を記録し、アメリカても初登場2位を記録した。これは1位になった『バーバリアン』もそうだが、公開週にメジャー大作がなかったというのも大きい。それでも記録は記録で、アメリカで公開されたインド映画が2位に入るのは史上初である。

今作は見ての通り、ヒンドゥー神話とアメコミヒーローの融合といったコンセプトのもとに制作されている。

先日、正式に4作目の製作が発表されたリティク・ローシャン主演の『クリッシュ』や、 新作も年内に公開予定のインドの国民ヒーロー『シクティマーン』もヒンドゥー神話とアメコミヒーローを下敷きとしているだけに、すでにトレンド化しつつあるジャンルであり、斬新な発想というわけではないし、ヒンドゥー神話だからといって宗教色が強いのかというとそうでもないし、あくまでファンタジーとしてコーティングしてあることからも、全く知識がなくても問題ないだろう。

また今作は初めて予告を観た当初は、「X-MEN」や「ファンタスティック・フォー」といったマーベルに寄り添った作品なのかとも思ったが、能力エフェクトがDCコミックスの「グリーンランタン」に似ている気がしていたが、似たようなエフェクトは他にもたくさんあるだけに、そこまで確信がなったが、アヤーンの初監督作品『Wake up Sid!』を改めて観てみると、そこに答えがあった。

主人公シドの部屋にはアメコミがたくさん置かれているが、ほとんどDCコミックス、パソコンの壁紙も「ジャスティス・リーグ」、そして着ているTシャツが「スーパーマン」「バットマン」「ザ・フラッシュ」「ジョーカー」とDC作品率が圧倒的に多い。

シドの趣味の設定は、おそらくアヤーン自身のものが投影されているようにも感じるだけに、マーベルよりも圧倒的にDCファンであるこがわかることから、「グリーンランタン」を参考しているのだろうという説が濃厚になってきたのと同時に、インド国内でもアメコミ映画がヒットしていてトレンドだという理由以前に、初めからいつかヒーロー映画を撮りたいと思っていたことが何となく伝わってきたのだ。

そうは言いながらも前2作がラブストーリーであったことからも、今作もラブストーリーの要素が強い。またランビールとアーリヤーが実際に交際(その後、結婚した)していただに、メタ的な説得力も増している。

結局のところ何物にも勝るのは「愛の力」だというド直球で臭いことを描いているのだが、実際にそうだから妙な説得力をもたせていて、作中歌の「ケサリヤ」はインドの新たなラブソングとして定着するのにそれほど時間はかからなかった。

まだラブストーリーの要素を残しつつだった『バンバン!』がシッダールト・アーナンドの分岐点だったように、アヤーンの分岐点は間違いなく今作といえるだろう。そして次回作が『ウォー2』という点でも全く同じ道を進んでいる。このままラブストーリーを主体としたアクション映画監督となっていくのか、もしくはシッダールトのように、完全にアクションに踏み切るのかは、今後も見守っていきたいところだ。

ランビール演じるシヴァの母をディーピカー・パードゥコーンが演じているが、ランビールとディーピカーはかつての恋人同士。実際に顔を合わせることはなく、回想シーンのみだが、母と息子という立ち位置になっていること自体が不思議なものだし、よくキャスティングしたと思う。

キャスティングのことをいえば、冒頭に登場するシャー・ルク・カーンには実は裏設定が存在している。それはシャー・ルクの演じているモハン・ガルバブという学者は、アヤーンが初めて脚本として参加した作品『Swades: We, the People』でシャー・ルクが演じたキャラクターと全く同じ名前なのだ。

点数 82

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