作品情報
1997年に韓国で実際におこった通貨危機の裏側を描いた社会派ドラマ。1997年、韓国経済は急成長を遂げ、いつまでも好景気が続くと多くの国民が信じて疑わなかった。そんな中、韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョンは通貨危機を予測していた。政府は非公開の対策チームを招集するが、国家破産まで残された時間はわずか7日間しか残されていなかった。独自に危機の兆候をキャッチし、これを好機と見た金融コンサルタントのユン・ジョンハクがある大勝負に出る。その一方で、経済情勢に明るくない町工場の経営者ガプスは、大手百貨店からの大量発注を手形決済という条件で受けてしまう。シヒョン役をキム・ヘス、ジョンハク役をユ・アイン、ガプス役をホ・ジュノ、IMF専務理事役を韓国映画初出演となる『アレックス』のヴァンサン・カッセルがそれぞれ演じる。
『国家が破産する日 』レビュー
韓国映画初の「通貨危機」を扱った作品
韓国映画史上初の1997年に起きた韓国通貨危機を扱った作品。
この映画では3つの視点が用意されている。
ひとつは韓国の都市銀行「韓国銀行」の通貨政策チーム長の女
そして通貨危機を逆手にとって、ぼろ儲けしようとする金融コンサルタントの男
最後に末端の小さな工場を営む男
この3つの異なる立場と視点から通貨危機とは何だったのかを描き出した作品でテイスト的にはアダム・マッケイの『マネー・ショート』を思わせる作品だ。
経済バブルだと思われていたのに…破滅はやってきた
過去にも1970年代のオイルショック、1987年のブラックマンデー、2007年の世界金融危機などの金融危機というのは世界各国で起きているが、国の経済崩壊は静かに音を立てずにひしひしとやってくるということ。
当時の韓国も誰も国が危ないなんて思っていなかった。逆にバブルで映画でも描かれている通り社員には、他の会社に移らないようにと、ほいほいお金を渡すありさまで日本で言えばバブル期を思わせる。
見えなかったのか、見えないようにしていたのか…不安を抱えながらも国が安心だと言っていることを信じることしかできない。信じるしかないという国民。
わかっていても軌道修正をかけられず不のサイクルに陥っても、国民にはプロパガンダで経済的に潤っているように見せかけたり、安心だと言い聞かせる。
この映画でも国民には金融危機に発展するまで政府からは知らされなかった。
スタイリッシュさはあるが、決してエンターテイメントにはしておらず、ひしひしと迫る緊迫感を演出していて、ラストも決してハッピーエンドにはならない。
映画である程度のことを説明してくれているから、無知識で観ても理解はできるが、より楽しむには事前に韓国通貨危機について調べておいてから観るといいかもしれない。
久しぶりに何回か観たい作品に出合った。
キム・ヘスの演技が必要不可欠
セクシーな役や殺し屋役をやったり、妊婦役やったり…と幅広い役をこなす演技派女優としてしられるキム・ヘス。
今回は韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョンという役。
このキャラクターはキム・ヘスにとっては今まであまり見たことがないような地味な役だが、国民と政府との間で揺れるという難しい立ち位置にいて、普段は完璧主義で潔癖症を思わせるほどの清潔感を漂わせるキャラクターである。
しかし、物語が進むにつれて、意見が通らないもどかしさや怒り、悲しみが彼女の演技の微妙な変化で伝わってきて、凄い女優だと思って彼女から目が離せなくなった。
それとは対照的にちょっと大げさに感じられる演技をするのが金融コンサルタントのユン役のユ・アインだが、逆にユンというキャラクターの温度差がこの作品ではアクセントになっている。
点数 82点
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