作品情報
日光大江戸村で働く立石大輔(ディーン・フジオカ)は抜群の身体能力の持ち主だが、社交性がなく、一方日本の文化に傾倒している変わった男で、周囲からは距離をおかれていた。忍者ショーでも任されているのは、立ち回りではなく効果音担当。神社で人知れず、非科学的なトレーニングに勤しむのが日課だった
『Pure Japanese』レビュー
スタント中の事故で、目の前で人が死んでしまったことが、トラウマとなっているワケあり男・立石が、トラウマと戦いながら、社会復帰を目指そうといている中で、自分の暴力性を抑えられなくなるような事件と遭遇する…..
立石の目には、狂気性や殺意を感じつつも、トラウマや秘密を抱えた男の物語としては、古典的ともいえるだろう。
王道の物語だと思うし、プロット的には、確かにその路線のはずなのだが、全く違う方向に向かっていく。
つまり今作は、人を殺すことができる人物に対して、視点をどこに置くか、どんな環境に置くかで、ヒーローにもサイコパスになるということを描いている。
前半は、ワケありではあるが、あえてクールなヒーローのように描かれている。ディーン・ブジオカという役者のイメージを巧妙に利用した印象操作。人が困っていたら助けずにはいられない、大和魂を持つ男なのだという、ワザと観客を偏った視点から見せる。
敵対する相手もヤクザやチンピラ、汚職政治家だったりするため、立石がヒーロー的な存在であると疑わない。仮に血みどろになったとしても、ダークヒーローとして納得してしまうだろう。
しかし、後半になると様子が変わってくる。というよりも、観客の見方が確実に変化する。実は一貫して、描いていることは、冒頭から変わっていないのだ。
立石の行っていることは、結果的には、少女側に寄り添っているものの、表情を変えず、平気で嘘をつくことや、日ごろから日本刀を手入れしている姿までもが、狂気性にしか感じられなくなってしまう。
立石は、光を嫌い、その光によって、事故で亡くなってしまった人間の姿がフラッシュバックする。それも立石をヒーローと疑わないから、観客が勝手に想像してしまうだけにすぎない。光は彼を殺意の衝動を呼び覚ますトリガーだったとしたらどうだろうか?
架空の施設ではなく、「日光江戸村」という固有名詞を使用していることから、舞台は栃木であるため、大丈夫なのかと心配する部分も多い。
というのも、グローバル化の波や、土地開発問題など、外国化する日本への怒りも感じられて、なかなか右寄りな思想も盛り込まれている作品であるからだ。
非常に危険な映画でありながら、中毒性のあるのも事実。カルト映画として語り継がれる作品になりそうだ。
余談ではあるが、『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』はディーン・フジオカが演じても良かった気がする。ちょっと意識しているような感じがしないでもない。
点数 84
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