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THE映画紹介『魔法にかけられて』ディズニーが自己否定の壁を突破した分岐点作品!!

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『魔法にかけられて』

作品情報

アニメーションの中の美しい王国アンダレーシアで暮らす心優しいジゼル。夢にまで見たエドワード王子との結婚式の日、ジゼルは魔女に騙され、恐ろしい世界へと追放される。たどり着いたのは、ロマンティックな“おとぎの国”とは正反対の“現代のニューヨーク”だった!大都会の冷たい人たちに戸惑うジゼルを助けたのは、現実主義でバツイチの弁護士ロバート。動物と話し、ところ構わず歌いだすジゼルに驚き、時にうとましく思うロバートは、彼女と過ごすうちにその素直で心優しい姿に惹かれていく―。しかし彼女を追って現代にやってきたエドワード王子やその家来、更にジゼルを罠に陥れたナリッサ女王の登場で、ニューヨークの街は大パニックに……。

『魔法にかけられて』基本情報

2007年製作/108分/アメリカ
原題:Enchanted

監督 : 『ターザン』『102』ケヴィン・リマ

脚本: 『シャッフル』 ビル・ケリー

出演 :

ディア・エヴァン・ハンセン』『バイスエイミー・アダムス

『バレンタインデー』『スクリーム4』パトリック・デンプシー

アナと雪の女王2』『シンデレライディナ・メンゼル

スペンサー』『秘密と嘘』ティモシー・スポール

ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』『ソニック・ザ・ムービージェームズ・マースデン

マダム・メドラーおせっかいは幸せの始まり』『ブラックバード 家族が家族であるうちに』スーザン・サランドン

短評

王道でステレオタイプな物語のど真ん中を歩いていたディズニーにとって、2000年代は最も変化を求められたといっても過言ではない。

2001年にドリームワークスが『シュレック』によって、ディズニーとは真逆の徹底的な古典の解体を行ったことや、多様性や女性の描き方の変化。何より提携していたピクサーにも押される勢い。

ピクサーとは同時並行で『チキン・リトル』『ライアンを探せ』『ルイスと未来泥棒』などの単独作品を制作するものの、いまいちヒットしない……王道がヒットしなくなっていたのだ。

『シュレック』や、のちにディズニーが映画化するミュージカル舞台『イントゥ・ザ・ウッズ』のような、古典の解体。つまりディズニーによって、女性は王子様と結婚することが最高の幸せという、保守的なステレオイメージを世界に蔓延らせたことへの自己否定そのものとなったのが今作である。

その壁はワーナーやパラマウントもぶち当たってきたが、ディズニーにとってはより大きい壁であった。テーマパーク含めて、王道でメルヘンな物語自体がディズニーという企業の基盤を支えているからだ。

これは今でもLGBTに関して、一歩踏み出せない環境におかれていると同じ状況であるし、ドラッグやセックス、同性愛を連想させる描写があるものをDisney+とSTAR、またはHuluで分けているように、ディズニーという企業が世界に及ぼす影響というのを自覚し、慎重になっているのだ。

その壁を複数に分離するとしたら、今作はメルヘンの解体というべき分岐点ともいえるだろう。

おとぎ話を現実に置き換えると、いかにカオスな状態になるのかということを、リベラルの中心地、現代ニューヨークを舞台に描いてみせていく。

tick, tick… BOOM!: チック、チック…ブーン!』にも登場するスティーヴン・ソンドハイム原作のミュージカルを2014年にディズニーが映画化した『イントゥ・ザ・ウッズ』も同様に古典の解体を描いているが、おそらく今作がなければ、ディズニールートでの映画化に踏み出せなかっただろう。

ただ、全部を解体してしまっていいものだろうか。ステレオタイプの中にも大切なメッセージ性というのは、間違いなく存在していて、表現方法や価値観が変化していくとしても、揺るぎない不文もあるのではないか……という自己否定ではなく、時代の変化に適応していくという決意表明とも解釈できるのだ!!

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