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THE映画紹介:『プロミシング・ヤング・ウーマン』大小問わず世界中に蔓延る男性至上主義への復讐をエンタメとして描いた!!

イントロダクション

2021年、93回を数える米・アカデミー賞®において、初めて監督賞候補に複数の女性がノミネートされ、大きな話題を呼んでいる。そのひとり、エメラルド・フェネルの長編デビュー作『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、すでに全米脚本家組合賞でオリジナル脚本賞を受賞。大胆不敵な物語に共鳴したマーゴット・ロビーが製作に名乗りを上げ、誰にも譲りたくなかったという主人公役をキャリー・マリガンが快諾。ウーマンパワーが実を結び、ハリウッドの歴史をも揺るがす、記念すべき作品がここに誕生した。

ストーリー

タイトルの通り“前途有望な若い女性” プロミシング・ヤング・ウーマンだったキャシーに起きた悲しい事件をきっかけに、スリリングな復讐劇とスウィートなラブストーリーとが並行して描かれる本作は、多くの観客の共感を獲得しつつ、激しい論争を巻き起こしている。その理由は、女VS男という対立構造の中でどちらかを断罪して終わるのではなく、社会に蔓延るジェンダーバイアスを浮き彫りにしているから。彼女の落とし前の矛先は“ナイスガイ”だけに留まらず、“同調圧力オンナ&女だからとわきまえる女”へも向けられ、痛烈に批判する。好きか嫌いかを超えたその先に、私たちが何を見出すのか、まずは本作を目撃してほしい。明るい未来が約束された、これからを創り出す、すべてのひとたちに。

スタッフ・キャスト

監督 : エメラルド・フェネル

脚本 : エメラルド・フェネル

出演 : キャリー・マリガン『ワイルドライフ』『プライドと偏見』

ボー・バーナム『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

ラヴァーン・コックス『ロッキー・ホラー・ショー』『エマの秘密に恋したら』

アリソン・ブリー『ホース・ガール』『ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト』

コニー・ブリットン『ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密』『スキャンダル』

マックス・グリーンフィールド『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『ターキー・パニック

クリストファー・ミンツ=プラッセ『ゲット・ア・ジョブ 〜僕たちの就職戦線』『キック・アス』

アダム・ブロディシャザム!』『サンキュー・スモーキング

クリス・ローウェル『マイレージ、マイライフ』

アルフレッド・モリーナバイス』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

ジェニファー・クーリッジ『 アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会 』『シンデレラ・ストーリー』

クレジット

製作 : エメラルド・フェネル

マーゴット・ロビー

トム・アッカーリー

ベン・ブラウニング

アシュリー・フォックス

ジョシー・マクナマラ

製作総指揮 : キャリー・マリガン

グレン・バスナー

アリソン・コーエン

ミラン・ポペルカ

撮影:ベンジャミン・クラカン

音楽 : アンソニー・ウィリス

編集:フレデリック・トラヴァル

2020年/アメリカ/カラー/113分

短評

エミー賞受賞ドラマ『ザ・クラウン』のコーンウォール公爵夫人カミラ役など、女優としても活躍するエメラルド・フェネルの長編監督デビュー作。『ブラック・クリスマス』のソフィア・タカール同様に、男性至上主義な映画界での息苦しさもいくらか反映されているだけではなく、現実社会においてもメスを入れた作品となっている。

キャリー・マリガン演じるカサンドラは、男性の多く集まるクラブなどで、泥酔いしたフリをして、それを狙って声をかけてくる男性をつかまえては、かつて強姦されたことで命を絶った親友へのリベンジを重ねてく。

誰でもというわけではく、本当に心配して声をかけてくれた人は、襲わないつもりであったが、ことごとくレッドゾーンを超えてくる男性たちが制裁を受けていくのだが、どういう方法なのかが、意図的に表現されておらず、観ている側に、男性が最も屈辱的だったり、精神的に打撃を受けることとは何かを想像させる構造になっている。

並行して、大学時代の知り合いライアンと再会し、デートを重ねることで、そういった男性たちとは「違う」と思ったカサンドラは恋に落ちていく。ライアンはカサンドラにとって、人間を再び信用できるきっかけになる、唯一の人物であったが、あることをきっかけに、その信用は地に落ち、絶望と共に復讐心へ拍車がかかってしまう。

時代もあったとはいっても、つい最近まで、恋愛映画やティーン・ムービーにおいて、女性というのは、男性の存在によって輝くかのように、男性主体で物語が構築されており、その中では、女性は物のように扱われてきた側面も強く、そこほ通ってきた世代のキャリー・マリガンが主人公というのが、また説得力が増している部分である。

音楽の使い方も巧妙。ブリトニー・スピアーズパリス・ヒルトンといった、エンタメとして消費された、いわゆる「おさわがせセレブ」は、被害者である女性側が悪いかのように報道され、傷つけられた象徴的存在であって、パリスもドキュメンタリー『This is Paris』 の中で、地獄のような日々を振り返っている。

そんなアーティストの楽曲を意図的に使用していて、特にブリトニーの楽曲「Toxic」をアンソニー・ウィリスがアレンジを加えたバージョンは不穏な空気を漂わせている。

作品のテイストのバイアスもあって、こんなことを言うと、またエイジズムがどうとう言われそうで、誰も言わないようにしているのかもしれないけど、キャリー・マリガンの口元に年齢がすごく出ていて、よく素材で使われているストローでドリンクを飲んでいるシーンや、ナースのコスプレしているのが、痛々しくもある。親友の死のトラウマがカサンドラが人生に疲れ切っているという設定からすると、説得力は増しているのだが、時の流れを感じて悲しくなってしまった。

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