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発掘!未公開映画研究所『ブラック・クリスマス』オリジナル版とは全く違う内容のリメイク!フェミニズムVS旧マスキュリズム思想!!

発掘!未公開映画研究所『ブラック・クリスマス』オリジナル版とは全く違う内容のリメイク!フェミニズムVS旧マスキュリズム思想!!

作品情報

クリスマスホリデーを満喫する女子学生たち。そんな時不気味な覆面をした人間が現れ、次々と学生を惨殺をしていく。怯える女子学生たちだが、危険が自身に迫った時、武器を取り立ち向かう決意をするのだが…。 監督は『ブラック・ビューティー』で高い評価を受けたソフィア・タカール。主演に『バーバラと心の巨人』『グリーンルーム』のイモージェン・プーツや『エージェント・スミス』『リトル・ヴォイス』のブリタニー・オグレディなどといった、若手女優を多数起用した。

発掘!未公開映画研究所とは?

宗教性の問題、出演者の知名度、お笑いの感覚の違い…などなどの理由によって、日本では公開にいたらない作品が多く存在する。アカデミー賞にノミネートされている作品でも未公開作品は多い。

それもそうだろう、逆にアメリカやフランスで日本の映画が何でも公開されていると言えばそんなわけもなく、全体的に見て1割にも満たないだろう。

日本はそんな中でも割と海外の作品を公開している珍しい国であって、そんな中でもやっぱり公開されない映画というのは山のように存在する。

「発掘!未公開映画研究所」はそんな映画を発掘していくというもので、その中でも更に知名度が低いものを扱っていくつもりだが、必ずしも良作ばかりではない、中には内容がひど過ぎて公開できなかったものもあるのでご注意を!!

今回紹介するのは『ブラック・クリスマス』

短評

1974年の映画『暗闇にベルが鳴る』の2度目のリメイク。2006年版では1作目の監督であったボブ・クラークがプロデューサーとして参加していたが、2007年に交通事故によって亡くなってしまった。彼が生きていたとしたら、今作を観てどう思っただろうか。そもそもこんなテイストにはさせなかっただろうか…

20年以上前に観たきりで、記憶があやふやだったために、もう一度オリジナル版と2006年のリメイク版を観てみたのだが…どうもおかしい。2006年版もオリジナル要素が多く、リイメクとしては攻めた内容であったが、そういう次元ではない。というのも内容自体が全く違うのだ。

無理に共通性を探そうとすれば、女子寮が舞台とか、凶器とか猫とか…見つけられなくはないし、オリヴィア・ハッセーが演じた主人公ジェスは、子供を身ごもりながら、自分の将来のために、母として生きるよりも子供を中絶しようとして自分の道を進もうとしていることに対して、それがフェミニストと言えるかもしれないが、こじつけに近いものになってしまう。

オマージュならまだしも、これをリメイクやリブートと言っていいのだろうか。何も情報を入れないで観た場合、リメイクだとわかる人がいないだろう。

マイケル・ベイがプロデュースした『テキサス・チェーンソー』や『エルム街の悪夢』『13日の金曜日』などもリメイクとは言いながらも、オリジナル要素を詰め込んだ独自の作品に仕上げていたし、失敗作と言われている2019年の『チャイルド・プレイ』もブードゥー教の秘術で魂を人形に移すという設定から、現代に合わせたAIの暴走と変更されていたが、殺人鬼やモンスターというアイコンの存在によって、リメイクやリブートとして留まっていられるのだが、今作にはそれもないため、オリジナル版にも2006年版にも登場した殺人鬼は見事なまでに登場しない。

単純にホラー映画として観た場合も、オリジナル版よりも狂気的な部分では上回っていた2006年リメイク版と比べてホラー的描写が弱く、ホラーやスラッシャーを観るつもりだった人は、困惑するかもしれない。どうも監督はホラー映画には慣れていないようでもある。

では何を描いているかというと、フェミニズムと旧マスキュリズム思想(男性至上主義者)との対決なのだ。女性蔑視、男性蔑視と何かとデリケートでバランスが難しい現実社会とは別にまだまだハリウッド含む映画業界において、女性差別はまだまだ蔓延っているというメタファーであり、なかなか攻めた内容だ。

この作品で描かれているのは、男性至上主義者であり、マスキュリズムではない。マスキュリズムというのは、かつては男尊女卑の意味で使用されていたが、時代が進むにつれて、フェミニズムに対向するかたで使われるものとなっていった。

あくまで「戦争には男とか徴兵されない」などといった、男性に対しての差別を呼びかけるもので、「男が女より優れている」「女は男に従うべきである」という、かつてのアメリカ映画の中での男の道具のように扱われる女性像を求めるものではない。それと同じようにフェミニズムも、「男より優れている」など、どちらかが上の存在であると主張しているのではない。

近年、名作とされ、学校の教科書にも載っている『風と共に去りぬ』でさえも、人種差別表現に問題があって、論争を巻き起こしたほどで、いかに差別が映画業界に根深く蔓延っていて、それが今も抜け切れていないことをメタファーとしながら描いているのだ。

だからこそ、単純にフェミニズムとマスキュリズムの対決とは、振り分けられず、時代につれてアップデートされていく中で、先に進もうとする女性と古い考えを押し付け、抑圧する男性至上主義社会に打ち勝つことはできるのだろうかという、痛烈なメッセージ性を含んだ皮肉映画なのだ。

そのため、ホラー映画として観てしまうと、何か別のものを観てしまった気になってしまうし、建前としては名作ホラーのリメイクとされているため、オリジナルのファンは困惑すること間違いなしなのだ。

何故こんなテイストの作品になっているかというと、監督であるソフィア・タカールの前作『ブラック・ビューティー』(2016)を観ることで理解することができる。

『ブラック・ビューティー』で描かれるのは、正にハリウッドや映画業界、更には現実社会における女性差別を2人の対照的な女優によって描くというものだ。

ベスには、女優の仕事があるが、それは自分が女性であることを全面にアピールして獲てきたもので、CMのイメージガールやヌードがあるホラー映画が多く、ベス自身も、女優としては軌道に乗って成功していくのかもしれないけど、このままで良いのかという悩みを抱えていて、自分を主張するアナが気になる。

アナは、しっかりと自分の主張やプライドを持っていて、服装や髪型も男性目線を気にしていないが、そのため女性を売りにした仕事を獲ることができないことで、ベスとは対照的に、自分流で良いのか、もっと男性に媚びた女性になった方がいいのか、ということに悩んでいて、ステレオタイプな女性的魅力のあるベスが気になる。

どちらの立場でも同じ問題に苦しんでいるのだが、それが正に映画業界、日常生活に蔓延り、差別をしている側も差別意識がないまま行われている女性差別なのだ。

これは、女優でもあるソフィア・タカールが肌で感じていたものが、いくらか反映されていると思われる。女優という特殊な職業でもある立場から見ることで、女性差別を浮き彫りにした作品で嫉妬による女性の争いが起こる心理ミステリーというのは、あくまで表面上のイメージでしかない。

バイス』『タラデガ・ナイト オーバルの狼』の監督アダム・マッケイや『スキャンダル』『俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員!』のジェイ・ローチ、『ローマの休日』『黒い牡牛』の脚本家ダニエル・トランボなどが自分立の作品に政治色を反映しているように、自分の言いたいこと、訴えたいことを作品に乗せて、世界に発信するというのも、また作家性といえるだろう。

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