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コラム:NetflixがYouTubeからパリス・ヒルトンのコンテンツを引き抜き!Netflixの次なる野心も浮き彫りに…

コラム:NetflixがYouTubeからパリス・ヒルトンのコンテンツを引き抜き!Netflixの次なる野心も浮き彫りに…

Netflixは動画配信だけじゃ我慢できない!

2021年8月4日にNetflixで世界的なセレブとして知られるパリス・ヒルトンによる、料理番組『パリスとお料理』が配信開始された。

毎回、パリスが自ら食材を買いに行くシーンから始まり、ゲストを招いて料理を作るというだけなら、シンプルな料理番組だが、明らかに料理が得意とは思えない手際の悪さや、料理に適さない衣装で食材がベタベタと衣装に付いてしまう。

塩のふたを入れたままミキサーを回してしまい、壊してしまうことも…

キム・カーダシアンやデミ・ロヴァートなど、普段から仲の良いセレブをゲストパートナーとして招き、一緒に料理をするのだが、そのゲストも料理が得意とは言い難い人物ばかり。

ただ、食材自体が良いものを使用しているため、大惨事にはならないまでも、観ながらレシピを覚えて一緒に作るような、本来の料理番組としての機能は全くなく、セレブたちの大掛かりな「ままごと」を観ているような、カオスな料理番組だ。

過去に歌手のライオネル・リッチーの娘、リコール・リッチーと一緒に、ガソリンスタンドや農場などで職業体験をする姿を追った、リアリティ番組『シンプル・ライフ』が放送され、話題となっていたが、のちにニコールとの不仲によって打切りとなり、番組自体も「ヤラせ」であったことが発覚したが、今回の場合は正真正銘のリアリティショーでもあるのだ。

この番組、実はもともとパリス・ヒルトンの公式YouTubeチャンネル内で、2020年頃から不定期に配信されていて、パリスのコンテンツ内でも約526万回と、圧倒的に再生された「Cooking with Paris」をNetflixが独立したコンテンツとして、自社に取り入れたものである。

YouTube版では、基本的にパリスがひとりで料理人などに相談しながら、作っていくものだったのが、差別化としてセレブをゲストに呼ぶスタイルとなった。

パリスは2007年頃からYouTubeを活用していたが、自身のミュージックビデオや出演番組をそのまま投稿するものが多く、YouTube用のコンテンツとしてのものではなかったが、2020年頃からは、YouTube用に積極的にコンテンツを発信するようになった。

パリスは、ホテル王コンラッド・ヒルトンのひ孫であることで、小さい頃からメディアから追われてきたが、20代前半になって、「お騒がせセレブ」として、ゴシップ誌を賑わせたことで、日本を含め全世界でも注目されてきた。

世間を最も騒がせたのは、元交際相手のリック・ソロモンとのセックスビデオ流出問題である。これはリックが交際破局後に意図的に流出させたものであり、『ワン・ナイト・パリス』というタイトルでポルノとして発売され、日本でも流通していた。

パリスは、被害者であるべき立場だというのに、世間からは自業自得という見方をされ、ワイドショーなどでも深刻な問題としてではなく、セレブのおバカニュースのような扱いで放送されており、現在も放送されている風刺アニメ『サウスパーク』では、「甘やかされた俗物」とまで言われ、映画やCMに出演する度にネタにされ続けてきた。

そんなパリスが常に見世物にされてきた、自分の過去と向き合い、インフルエンサーという自分自身を商品として発信する概念を、若い世代に定着させてしまった罪悪感、更生施設に入れられた経験や、そこでの精神的、身体的虐待についても語りながら、DJや実業家として活躍している現在の自分のあり方についても語ったドキュメンタリー『This is Paris』もYouTubeで配信されている。

YouTubeは、他にもジャスティン・ビーバーやデミ・ロヴァートなどの様々なアーティストの華やかな活躍の陰にある真実を追ったドキュメンタリーを多く制作しており、スターやセレブの真実はYouTubeにおいて、大きなコンテンツのひとつとなっている。

Netflixがディズニーや大手の製作会社から、クリエイターを引き抜いているのは有名な話であるが、2021年7月に発表されたゲーム事業への進出なども含めて、あらゆる角度から、事業拡大を図っている。

今回のようなYouTubeからの人気コンテンツ引き抜きというのも計画のひとつであり、バラエティ・コンテンツの面での強化が狙いのようにも思える。

YouTubeからコンテンツを引き抜いたのは、実は今回が初めてではない。

Netflixは『コブラ会』『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』ヒットコンテンツを見張っている!!

現在、日本のNetflixでも配信されている『ベスト・キッド』のスピンオフ作品『コブラ会』も、もともとはソニー・ピクチャーズ・テレビジョンがYouTubeに販売し、YouTube Premiumで配信されていたコンテンツであるが、それを引き抜きYouTube Premiumで配信されていたシーズン1-2と、それ以降に製作されたシーズン3以降は、Netflix独占契約というかたちで落ち着いている。

しかし、『コブラ会』の場合は、YouTubeというより、ソニー・ピクチャーズとの業務提携が背後にあることも要因として大きいため、似ている事例としては、

お笑い芸人ロバートの秋山竜次による『クリエイターズ・ファイル GOLD』である。

これもYouTubeの「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」からのスピンオフ扱いとなっており、オダギリ・ジョーや永野芽郁といったゲストによって、YouTubeとは差別化をしている。

Netflixは動画配信サービスを開始した頃から、バラエティに関しては積極的に取り込んできた。

スタンドアップ・コメディを集中的に扱ってきた一方で、ジェンダー問題や食、建築、都市伝説、アイドルなど様々なジャンルのバラエティ番組を制作してきていながら、他国のコンテンツも積極的に取り入れてきた。

以前からNetflixがライバル視しているのは、何も映画やテレビ業界だけではなく、「エンターテインメントに費やされる膨大な時間」という広い目線でゲーム会社やYouTubeも対象に含まれている。

だからといって、YouTubeのように、一般人でも動画を投稿できる点ではなく、その中でも抜きん出ている存在のコンテンツを試験的に引き入れようとしているのだ。

これはテレビ局やタレントを発掘する行為と同等のものであり、YouTubeは、もはやクリエイターの見本市のようなものになっているのかもしれない。

自身の制作動画を投稿している、映像クリエイターたちもハリウッドの映画会社から引き抜かれている現状は前々からあったものの、より激化しているように感じられる。

YouTubeとしても、広告収入などを含めた全体的な収益としては、現時点ではNetflixよりも上回っているが、動画配信サービスとしての地位を築こうとYouTube Premiumを展開させている側面もあることから、いかに自分たちの抱えているコンテンツを他社から引き抜かれないように守るかという自衛問題にも直面しているのだ。

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