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発掘!未公開映画研究所『ターキー・パニック』ドナルド・トランプが大統領になってしまったらどうする…というアメリカ人の不安をメタファーとして描き出す!!

発掘!未公開映画研究所『ターキー・パニック』ドナルド・トランプが大統領になってしまったらどうする…というアメリカ人の不安をメタファーとして描き出す!!

作品情報

大統領に忠誠を誓う「愛国者宣誓」への署名を訴える政府提案をきっかけに、国土全体に混乱が広がるアメリカ。感謝祭を目前に、親戚一同が集結。
いつも通りの感謝祭を過ごそうとするのだが、署名期日であるブラックフライデーを目前に、事態は急展開を迎える…。ブラックユーモア溢れるスリル満点コメディ! 主演は『ネイバース』『ザ・ハント』の アイク・バリンホルツ、『クレイジー・グッド』『ナイトスクール』のティファニー・ハディッシュ。共演には『search/サーチ』『ビトウィーン・トゥ・ファーンズ: ザ・ムービー』のジョン・チョウなど

発掘!未公開映画研究所とは?

宗教性の問題、出演者の知名度、お笑いの感覚の違い…などなどの理由によって、日本では公開にいたらない作品が多く存在する。アカデミー賞にノミネートされている作品でも未公開作品は多い。

それもそうだろう、逆にアメリカやフランスで日本の映画が何でも公開されていると言えばそんなわけもなく、全体的に見て1割にも満たないだろう。

日本はそんな中でも割と海外の作品を公開している珍しい国であって、そんな中でもやっぱり公開されない映画というのは山のように存在する。

「発掘!未公開映画研究所」はそんな映画を発掘していくというもので、その中でも更に知名度が低いものを扱っていくつもりだが、必ずしも良作ばかりではない、中には内容がひど過ぎて公開できなかったものもあるのでご注意を!!

今回紹介するのは『ターキー・パニック』

短評

『ゲット・アウト』『アス』などで世界中に一躍、名をとどろかせたジョーダン・ピール同様にアメリカのコント番組『マッドTV!』の出演者であった、アイク・バリンホルツの初監督作品となる。

『ゲット・アウト』のプロデューサーでもある、ショーン・マッキトリックが今回も製作に関わっている。

邦題を見ると、ターキーといえばアメリカの感謝祭を想像させることもあり、『ミスター・ビーン』や『フレンズ』でもあった、七面鳥を被って抜けなくなってしまう様な、感謝祭でのドタバダコメディのような印象を受けるだろう。実際に大きくまとめると、そういった作品ではあるが、どうも社会風刺が強い作品であり、少しスリラー的要素も含まれている。

また感謝祭やクリスマスというのは、親戚や両親が集まることが多いイベントとして、家族の関係性を浮き彫りにする題材としても利用されることが多い。

『マッドTV!』は、裏番組『サタデー・ナイト・ライブ』に対抗するかたちで誕生した番組でもあることから、『サタデー・ナイト・ライブ』同様に時事ネタや政治色の強い風刺ネタも多い番組であったのだが、もうひとつの理由は『マッドTV!』の元となっているのは、風刺ネタ雑誌「MAD」だからだ。

風刺雑誌「MAD」は1952年に創刊され、時事ネタや映画ネタ、政治ネタを皮肉的やパロディとして扱った雑誌で、2010年にはアニメ化もされた。

アメリカのお笑い番組というのは、風刺ネタが欠かせないもので、『シンプソンズ』や『ファミリー・ガイ』といった、比較的子供も観るようなアニメ作品にも含まれていることが多く、そこが日本の感覚と全く違っているところだ。

そんなお笑いの世界で揉まれてきた出演者たちが製作サイドに回った場合、社会風刺の強い作品を扱う傾向が強い。

例えば『サタデー・ナイト・ライブ』の放送作家を務めていたアダム・マッケイと出演していたウィル・フェレルによる「俺たち」シリーズも実は社会風刺を含む作品が多かったが、近年では『バイス』や『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のように、政治や経済を皮肉った、社会風刺を表に出した作品も多く手掛けるようになった。

ストーリーとしては、ホワイトハウスが「次の感謝祭の日までに大統領への忠誠(愛国心)を誓う宣誓書に署名せよ」という命令を全国民に通達したことで巻き起こる騒動を描いたパラレルワールドでありながら、全くパラレルだと言い切れない絶妙なラインで展開される。

署名は強制ではないが、署名に反対派の人は、確実に何等かの圧力がかかっていて、セス・ローゲンなどの反対派だった著名人が行方不明になったりもしている中、どんどん期間が迫ってくるという状況下での人々の不安が、ドナルド・トランプが大統領に就任することへの不安を誇張した形として現されていて、これからアメリカは、国民はどうなってしまうのかといった独特の緊張感をもたらしている。

過剰に反応する者、紙きれだからと気にしていない者、様々な対応をする人々、人種の意見がぶつかり合う中で、アメリカという他民族国家を特徴的にも捉えているのだ。

アイク・バリンホルツとティファニー・ハディッシュ主演ということから、コメディというジャンルとされてはいるが、ティファニー・ハディッシュも『ガールズ・トリップ』や『クレイジー・グッド』のような下ネタ全開モードではないため、所々にフィクションではない、現実の怖さがチラつくのだ。

なんだかんだでティファニー・ハディッシュの映画の追っかけになってしまっている。こんなにティファニー・ハディッシュを取り上げている映画サイトもここぐらいではないだろうか。まだまだ追い続けたい!!

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