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THE映画紹介『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

THE映画紹介『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

作品情報

生まれたときからウェブサイトやSNSが存在する“ジェネレーションZ世代”のティーンたちのリアルな葛藤や恋、家族との関係を描き、全米で評判を集めた青春ドラマ。中学校生活最後の1週間を迎えたケイラは、“クラスで最も無口な子”に選ばれてしまう。待ち受ける高校生活に不安を抱える彼女は、SNSを駆使して不器用な自分を変えようとするが、なかなか上手くいかない。高校生活が始まる前に、憧れの男の子や人気者の女の子たちに近付こうと奮闘するケイラだったが……。『怪盗グルーのミニオン危機一発』で主要キャラクター・アグネスの声を務めたエルシー・フィッシャーが主演を務め、第76回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネートされた。YouTuber出身という異色の経歴を持つ人気コメディアンで、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』などで俳優としても活躍するボー・バーナムが自身の経験をもとに脚本を執筆し、メガホンをとった。

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』基本情報

2018年製作/93分/G/アメリカ
原題:Eighth Grade

監督: ボー・バーナム

出演 : エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン、エミリー・ロビンソン、ジェイク・ライアンほか

短評

自己表現としてSNSや動画を投稿しているものの、見られると恥ずかしいという真逆の意思が生じる。

言いたいことを書き綴ったメールを送ってみたものの、動画を撮ってみたものの、読み返したり、観返したりするのが怖くてできないという経験はないだろうか。この映画はそんな映画だ。

自分を見つけてほしいけど、見つけられたくはないという10代が持つ複雑な心理状況は、SNSが一般的となり、時代が変わっても人間関係や自分が何者であるかという悩みは昔から変わらない。

逆に表現の場が多種多様ななりすぎたことで、自己表現という空間で迷子になっている人も少なくないのだ。

10代ならではの心の揺れ動きを描いた作品の中では、近年ではトップクラスの作品と言っていいだろう。

リアルな心情の描き方には、監督は中学生なのではないかと錯覚してしまうほどだ。

映画としての描き方のディティールはアップデートされていくのだが、根本的な部分は、ティーンを扱った作品の中で普遍的なテーマと言ってもいいだろう。

主人公のケイラは、言いたいこと、発信したいことがある今どきの中学生ながら、学校では浮かない存在で「クラスで最も無口な子」だなんて負の称号を学校から与えられていまう。

無口ではなくて、タイミングがわからないし、一歩踏み出すことで受け入れられなかったどうしようという恐怖感がある繊細肌なのである。

こう言った繊細肌で、ただ失敗が怖くて慎重な子供に対して「無口」と処理していまう圧力、そしてその圧力が邪魔して、結果的に無口に導いてしまっていることこそが社会悪であるし、学校がそんなことをしてはいけない。

自分を殺して他人に同調することで、場に無理やり馴染もうとすることが果たしてコミュニケーションと言えるのだろうか。

SNSで自己主張ができる時代でも、他人と同調しないと仲間外れにされてしまう風潮からみても、人間はいつまで経っても学習していない生き物であると痛感してしまう。

繊細肌のケイラにとっては、ハードルの高い人気者たちの領域に踏み込む勇気と探求心によって生じる危なっかしさは、親目線で観ると何とも言えないものがある。

今作では、父親の視点も描かれている。

はっきりとした説明はされないが、ケイラには母親がいない。理由はわからないが母親は出ていったことになっており、母親のいないまま育ったケイラに辛い思いをさせてきてしまったかもしれないということも含めて心配でならない父親の目線というのが終始辛い。

父親というのは、どうがんばっても母親と同等の存在になるのは、難しいのだ。

繊細な時期だからこそ、そばにいてほしい母親がいないケイラの心の穴を埋めようとするが、逆にそれがけむたがられてしまうという父親の無力さが突き刺さる。

子供の目線と親の目線が対照的に描かれた作品は、他にも『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』などがあるが、親も同じ時期を経験したはずなのに上手いアドバイスができない、親目線でのもどかしさというのも、この時期の子供を描いた作品の特徴ともいえる。

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