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THE映画紹介『HACHI 約束の犬』ストーリーは置いといて、犬を撮ることが天才的な監督であることは間違いない!!

THE映画紹介『HACHI 約束の犬』ストーリーは置いといて、犬を撮ることが天才的な監督であることは間違いない!!

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『HACHI 約束の犬 』

作品情報

日本でも1987年に「ハチ公物語」として映画化された、亡き飼い主を駅前で待ち続けた忠犬として知られる秋田犬ハチの物語を、リチャード・ギア主演、「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」のラッセ・ハルストレム監督で映画化。迷子の秋田犬を拾い、ハチと名付けて飼い始めた大学教授のパーカー。ハチは毎日夕方5時に駅前でパーカーの帰りを待つようになるが、ある日、パーカーは大学の講義中に倒れ、帰らぬ人に……。

『HACHI 約束の犬 』基本情報

2009年製作/93分/アメリカ
原題:Hachiko: A Dog’s Story

監督: ラッセ・ハルストレム

出演: リチャード・ギア、ジョーン・アレン、サラ・ローマーほか

企画のはじまり

1987年に公開された映画『ハチ公物語』は、誰もが知っている渋谷のハチ公像の元になった忠犬ハチ公の物語である。動物の感動物語は、全世界共通の涙腺を刺激する題材であり、プロデューサーの日系アメリカ人3世のヴィッキー・シゲクニ・ウォンも心を揺さぶられたハチ公の物語を広めたいと思ったのがリメイク企画の始まりである。

主演のオファーを受け、脚本を読んだリチャード・ギアは感動し、涙まで流したことで製作にも関わることになり、愛犬家同士というつながりがあった映画監督のラッセ・ハルストレムに監督をオファーすることになった

ラッセ・ハルストレムが監督に決まったきっかけは、リチャード・ギアだったのだ。

犬を撮ることが天才的な監督

ラッセ・ハルストレムといえば、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や『僕のワンダフル・ライフ』といった犬を題材もしくは、犬を印象的に登場させる映画を得意としているおり、犬の目線を大事にしていることがわかる監督でもあるのだ。

ストーリーがシンプルということで地味な映画として処理されてしまいがちであるが、この映画で決定的なことは、ラッセ・ハルストレムの犬映画史上最高の犬の目線や心情を、犬がしゃべるという反則技(のちに『僕のワンダフル・ライフ』でやってしまった)をしないでみせることに成功した作品と言っていいだろう。

今回、犬の目線だとわかる様にハチからの視点は、犬は色盲で色が判別できないため、モノクロ映像として表現されている(近年では、ある程度の色が判別できるという研究結果も出ている)ことで分かりやすく表現されているが、実はそれ以上に劇中で起こるあらゆる出来事を犬目線で描いているため、映像としてはあまり描かれない出来事などもあるのだが、犬目線だから納得がいってしまう。映画を観ていて知らされる事実は、ハチを通して知らされるのだ。つまり犬体験映画でもあるのだ。

フジテレビ製作のハリウッド映画?

フジテレビ開局50周年記念作品だが、スタッフは全てハリウッドということでフジテレビ資本のハリウッド映画という、なかなかレアな環境で製作された映画である。

そのため日本語吹替え版では、当時「めざましテレビ」のアナウンサーであった高島彩がパーカーの娘アンディ役の吹替えをしている。

当初は、アメリカでも公開される予定で製作されたが明確な理由がわからないまま、公開は中止となり、ソニー・ピクチャーズからDVDがリリースされことでアメリカでは未公開映画となってしまった。

決して秋田犬が知られていないということではない。秋田犬は世界でも人気の犬種であり、俳優のサラ・ミシェル・ゲラーやアラン・ドロン、ロシアのフィギュアスケート選手、アリーナ・ザキトワも秋田犬を飼っていて、海外では「アキタ」として人気の犬種なのだ。

秋田犬の個性を反映したキャラクター構造

仔犬の時は柴犬なのに、途中で秋田犬に犬種が変わるというツッコミはしないように…

秋田犬は、少し人間臭く、忍耐が強く冷静であるため、他の犬みたく人間を喜ばせようと媚びることがないクールな犬種。

劇中でもパーカーの投げたボールを取ってくるのかと思えば、全然取ってこないというシーンが印象的だ。

だからこそ、そんなクールな秋田犬が主人を待ち続けるという構図は二重に感動を呼ぶ仕組みとなっているのだ

そもそもハチ公とは

ハチ公は1923年11月に生まれた。世間瀬千代松が東京帝国大学(東大)教授で恩師であった、上野英三郎博士にハチ公を贈った。博士は渋谷区に住んでおり、西ヶ原農事試験場に通うために渋谷駅から電車に乗っていたため、いつしかハチは毎日渋谷駅に博士の送り迎えをするようになった。ハチが博士の元にきてから1年5カ月経った1925年5月21日に博士は帝大教授会の席上で倒れ、そのまま亡くなってしまった。ハチはそんなことを知る由もなく、亡き主人を待ち続けることになる。

ハチは博士の親戚や植木職人に預けられたが、その度に逃げ出しては渋谷駅で博士を待ち続けた。

いつしかハチは渋谷駅では有名な犬となって、「ハチ公」と呼ばれるようになった。1932年10月4日に、朝日新聞がそんなハチの姿を記事にしたことで世間でも知られるようになった。

動物愛護会や日本犬保存会らによって1934年4月21日に銅像除幕式が行われた。なんと銅像が建てられたときは、ハチは生きていたため、生前銅像となったのだ。しかし、翌年の1935年3月8日に持病であったフィラリアによって亡くなった。ハチは博士と同じ青山墓地に埋葬された。

1944年10月12日に第二次世界大戦のため、金属供出で一度回収されているが1948年8月15日には再建された。そのため渋谷駅にあるハチ公は二代目なのだ。渋谷の再開発のため一時移設される予定ではあるが、現在のところどこに移設されるかは決まっていないようだ。

短評

私がこの映画を観たのは、2009年公開初日の8月8日だった。当時デーヴ・スペクターが色々な番組でやたらと「はちぃ~」というリチャード・ギアのモノマネをしていて、劇中でリチャード・ギアからそれを聞きたかったのだが、吹替え版しか公開されていなかったため、仕方なく吹替えで観たがリチャード・ギアを北大路欣也が担当しており、「はちぃ~」という、たどたどしさはなくなってしまったがソフトバンクのお父さんが犬の飼い主役というのは、おもしろいキャスティングである。

高島彩も吹替えに参加していたり、フジテレビ製作ということで、前評判はあまりよろしくなかったが、監督が犬を描くことに関しては天才的であるラッセ・ハルストレルということもあり、素晴らしい感動作品に仕上がっていた。

犬が亡き主人を待ち続けるというプロット自体が感動しないではいられないものではあるが、それ以上にハチの目線を通して物語を進めるという、犬目線を巧みに使った演出と秋田犬のもつ特徴や性格を反映させることで描き切ったことは流石である。

犬が言葉を喋ったり、脳内で想像していることを言葉に表すという手法を全く使わないで、犬の気持ちを表現できた映画としては、クオリティの高い作品と言えるだろう。

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