作品情報
スペインの新鋭ガルダー・ガステル=ウルティアが、極限状態に置かれた者たちの行動を通して様々な社会問題をあぶり出した異色スリラー。ゴレンは目が覚めると「48階層」にいた。そこは遥か下まで伸びる塔のような建物で、上下の階層は部屋の中央にある穴でつながっており、上の階層から「プラットフォーム」と呼ばれる巨大な台座に乗せられて食事が運ばれてくる。食事は上にいる人々の残飯だが、ここにはそれしか食べ物はない。各階層には2人の人間がおり、ゴレンは同じ階層にいた老人トリマカシから、1カ月ごとに階層が入れ替わること、そして食事を摂れるのはプラットフォームが自分の階層にある間だけ、というルールを聞かされる。1カ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは以前より遥か下の「171階層」で、しかも彼はベッドに縛り付けられ身動きが取れなくなっていた。2019年・第44回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で観客賞、第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀作品賞など4部門を受賞した。
『プラットフォーム』レビュー

国によってはNetflixスルーとなっている作品であるのだが、スペイン語タイトル「穴」という意味に対して、海外タイトルは「プラットフォーム」となっているのは何故なのか。
何等かのメタファーであることは間違いないのだが、今作が示している思われるものが2つある。
ひとつは、現代社会における縦社会、貧富の差のメタファーである。これに関しては、非常にわかりやすく反映されており、「穴」というスペイン語タイトルからも納得ができる。
『21世紀の資本』のモノポリー実験でも触れられた通り、単にゲームであっても、上位に立った者は、自分よりも下の者に態度が大きくなるという構造が貧富の差がもたらす人間関係を描いているとされていたが、今作にもそれが当てはまる。
たまたま上の階になったというだけにも関わらず、下の階に人間に対して唾を吐く者もいる。そんなことをする理由はどこにもないのだが、上の階にいることで、自然に見下すようになってしまうのだ。
しかし、もうひとつ示しているものがあると思った理由として、海外タイトルが『プラットフォーム』となっている部分がどうも引っかかったからなのだ。
今作は、パンフレットがなく、情報が極端に少ないため、明確な答えがなく気持ち悪さが残るのだが、私が初めにタイトルを聞いた際に、アルゴリズムを描いているものだと思ったのだ。
プラットフォームはつまり、GAFAは勿論、TwitterやYouTube、検索エンジン、ショッピングサイトなどの土台のことであり、それの表示基準やSEOのアルゴリズムを描いているのではないだろうか。
毎月、自分のいる階が見直される。上に上がることもあれば、極端に下がることもある。その基準が全くわからず、対応ができないまま、それに従うしかない。
市場を独占されているため、どうしてもプラットフォーム内の独裁的ルールに従わなければ、ビジネスができない(死ぬしかない)。
一方で支配している上の存在が全くの謎であるということ、意見が届かないこと…など、正に企業が大きくなりすぎて、ユーザーひとりひとりを大事にしないで、機械的な対応しかできない。
声が届き難いという点でも、類似しているようにも思える
肉片にモザイクはかからないのに対して、あるシーンで食べているものにモザイクが入るのだが…いったい何を食べているんだ。

点数 79
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