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この映画語らせて!ズバッと評論!!『容疑者X』日本版よりも原作に近いキャラクター設定も?!リメイクではなく、インドでの映画化!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『容疑者X』日本版よりも原作に近いキャラクター設定も?!リメイクではなく、インドでの映画化!!

作品情報

東野圭吾の名作「容疑者Xの献身」をインドで映画化!シングルマザーのマヤが犯罪捜査に巻き込まれたとき、天才的頭脳を持つ数学教師の隣人ナルーが彼女に救いの手を差しのべる。一方、刑事でナルーの旧友カランは、容疑者として浮上したマヤを怪しいと思いつつも惹かれていくことに……。

『容疑者X』レビュー

東野圭吾原作の「ガリレオ」シリーズであり、韓国と中国でも映画化された「容疑者Xの献身」がインド(ヒンディー)で映画化。

よく勘違いする人が多いのだが、こういった場合は映画版をリメイクしているわけではないため、インドでの映画化というのが正しいだろう。

インドで東野圭吾原作を映画化したといえば、「ブルータスの心臓」を映画化した『愛しのモニカ』も記憶に新しいが、実は今作の企画自体は2013年頃からあったのだが、なんだかんだで先に制作された韓国版と中国版の映画版を品定めしつつ経由してきて、のちの映画化のような感じもする。

監督を務めるのは『女神は二度微笑む』のスジョイ・ゴーシュであるが、日本でも『見えない目撃者』というタイトルで吉岡里帆主演でリメイクされた中国映画『ブラインド』のヒンディー・リメイク『Blind』のプロデューサーや『ナイト&デイ』のリメイク『バンバン!』の脚本を務めていたことからも、リメイク作品にも多く関わってきている映画人でもあるのだ。

現在、インドではホラーもそうだが、サスペンスに力を入れていて、アメリカはもちろん、ヨーロッパや韓国のスリラー作品を研究している傾向があって、もともとインド映画界のなかでもサスペンスを得意としているスジョイがそれを今やっているということは、次に何を出してくるかが今から気になってしまう。

俳優もなかなか渋いチョイスとなっている。

ZEE5のドラマシリーズ「Bloody Brothers」や『An Action Hero』『血の抗争 Part1』など、ハードボイルドな役が多いジャイディープ・アフラワットがかつらを付けて、あくまで演技をみせるという役者魂を見せつけており、もともと演技派ではあるものの、ジャイディープのイメージは少し変わったのではないだろうか。

ジャイディープが演じているナルーは、日本の映画版『容疑者Xの献身』では堤真一が演じていた石神にあたる役ではあるが、日本版ではアレンジが加えられていて原作とは違ったキャラクター構造となっていた。

さらに言えば中国版も韓国版もビジュアル的には、どちらかといえば原作というよりも堤真一のイメージを意識したようなものとなっている。

しかしインド版では、原作の通り頭皮が薄く、実年齢より老けていて、柔術の使い手であるなど、日本版にない原作要素が入っている点からも、映画の『容疑者Xの献身』のリメイクではなく、原作を映画化したということが改めてわかる。

大まかな流れは同じではあるが、ガリレオ的立ち位置のキャラクターのカランを、『ダーリンズ』や『慕情のアンソロジー2』など、最近Netflixに気に入られているのであろうヴィジェイ・ヴァルマが演じているのだが、ガリレオだけでなく、草薙と工藤を混ぜ合わせた要素を持ったキャラクターになっていて、ひとりのキャラクターに強引に詰め込み過ぎた感じはするものの、その分ナルーの視点が際立っていて、主人公がカランではなく、ナルーであることが強調されているようにも感じられた。

もともとそうだったのだが、年齢と共にえらが張って、独特の顔になってきたカリーナ・カプール演じるマヤの塩対応ぶりが上手く嚙み合っていないゆうにも感じられる一方で、それはそれでナルーの人生の虚しさを感じさせるものとしては大きく機能している。

ナルーの自己犠牲によって、マヤと娘が罪悪感を抱くという、原作や日本映画版において、人間の損得だけでは測り切れない”情”というものを持った、不器用な生き物であることを一番良く描き出している部分が、かなり薄口に処理されているため、感情が入り乱れる人間ドラマというよりは、自己満足な一方通行のような消化不良的余韻を残してしまうのは残念でならないのも確かで、かなり好みは別れるキャラクターの描き方ではあるだろう。

ちなみにカラオケバーで歌った曲(歌はネハ・カッカーの吹替え)は今作のタイトルソングとされているのだが、オリジナルで作中に一部映像も使用されている1969年のヒンディー語映画『Intaqam』のなかのリタ・マンゲシュカルによる楽曲「Aa Jane Jaan」。

誰でも知ってると言っていた通り、インドでは大ヒットソングとして知られている曲だ。

そして忘れてはならないのが、マヤの娘のタラを演じているナイシャ・カンナの存在だ。

今作では、やや控えめな演技となっているが、『あの時にもう一度』ではカトリーナ・カイフの幼少期、『Hichki』ではラーニー・ムケルジーの幼少期、『 女神は二度微笑む 』ではヴィディヤ・バランの幼少期を演じたスーパー子役。

今後注目の若手女優となっていくことは間違いないだろう!!

点数 82

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