作品情報
ある男性が仲間たちと過ごした25年間を、1990年代から2010年代まで撮り続けたホームビデオの映像をつないで描いた青春ドラマ。1993年、パリ。13歳の少年マックスは両親から贈られたビデオカメラで家族や友人たちとの日常を撮り始め、それは彼のライフワークとも言える趣味になった。38歳になったマックスは、それまで撮りためた25年分の映像を振り返り、編集する。そこにはいつも一緒にいた4人の仲間たちとの、かけがえのない日々が全て記録されていた。素直になれず大切なものを手放してしまったマックスは、新たに“映画”のラストシーンを準備する。人気コメディアンのマックス・ブーブリルが主演を務め、盟友アントニー・マルシアーノ監督と共同で脚本も手がけた。
『PLAY 25年分のラストシーン』レビュー
リチャード・リンクレイターの『6才のボクが、大人になるまで。』では、6~18歳までの間を実際に俳優の成長に合わせて撮影していたという、反則技映画があり、高く評価されたが、今作は当然ながらフィクションである。
しかし、本物のように感じられるのは、キャスティング能力の素晴らしさからだろう。9ヶ月かけて、SNSなど様々な手段で呼びかけた結果、3000本というビデオが送られてきて、それをチェックしていったというのだが...よくこんなに似ている俳優をキャスティングできたものだ。
特に劇映画テイストではなく、あくまでホームビデオをつなぎ合わせたような構成となっているため、次の映像から別の俳優に切り替わるというのは、物凄く違和感を感じるシーンになりそうなものが、自然に導入できているというのは、素晴らしい。キャスティングの部分だけでも大きく評価できる作品だ。
物語はシンプル。主人公マックスが13歳のクリスマスにビデオカメラをプレゼントされた日からスタートする。もちろん間には、国際的な問題、政治的な問題も起きているわけだが、それはほとんど描かれないため、国としての時代の変化というのは、あまり感じにくいかもしれないが、その時に流行っていた音楽やプレイステーションの発売、ワールドカップといったものの方が映し出されることによって、時代の変化は描かれている。
全体を通してもメインに何を描いているかというと、好きだったのに告白できない男が勇気を出すのに時間をかけ過ぎたという記録でしかない。
しかし、こちらの方が実は当時を生きていた若者の目線としては正しいのだ。あくまで一般的な思想、一般的な家庭のマックスだからこそ、等身大のキャラクターとして感情移入できた人は多いのではないだろうか。
親友のようにいつも一緒にいる相手は、近すぎて遠い存在でもある。これは最近の映画でいうと『イエスタデイ』などでも描かれていた。映画を観ていると、「そんなに好きなら告白しろよ!」と思ったりもするが、実際にはそんなものかもしれない。リアルな世界では、映画みたいに結婚式で相手を奪って逃げるわけにもいかないだろう。
フィクションであるため、劇的なシーンも作ろうと思えば作れるわけだが、今作では、あえてそこが抜けていたりするため、メリハリがないようにも感じられる。父がいなくなっていたり、友達が減っていたり、母の病気など、 あえて映画的には必要なシーンが抜けているわけだが、それは劇的なシーンこそカメラを向けるべきではないという一般家庭におけるモラルが反映されているからであって、逆にそれがリアリティを感じさせるのだ。
子供が撮る映像なんてバカなものが多く、間には非常に痛々しいシーンも多いのだが、子供がカメラを持ったら、まず何をするかと考えると、これは正しいのかもしれない。それを後で観たときの、どうしようもない恥ずかしさというのも映画として、ストーリーとして反映させているのも、流石である。
監督のアントニー・マルシアーノ自身も1979年生まれであり、主人公の年齢に近いこともあって、自伝的な部分も反映されているのではないだろうか。
近年、80~90年を描いた作品がトレンドのようでもあるが、これは作り手が、その年を正に生きてきたからであり、映画業界も30~40代に世代交代されていっているということだろう。
点数 80
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