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この映画語らせて!ズバッと評論!!『沈黙のパレード』ガリレオ最新作は草薙の視点から描く、警察という組織、そして法のあり方!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『沈黙のパレード』ガリレオ最新作は草薙の視点から描く、警察という組織、そして法のあり方!!

作品情報

天才物理学者・湯川学の元に、警視庁捜査一課の刑事・内海薫が相談に訪れる。行方不明になっていた女子学生が、数年後に遺体となって発見された。内海によると容疑者は、湯川の親友でもある先輩刑事・草薙俊平がかつて担当した少女殺害事件で、完全黙秘をつらぬき、無罪となった男・蓮沼寛一。蓮沼は今回も同様に完全黙秘を遂行し、証拠不十分で釈放され、女子学生の住んでいた町に戻って来た。町全体を覆う憎悪の空気…。そして、夏祭りのパレード当日、事件が起こる。蓮沼が殺された。女子学生を愛していた、家族、仲間、恋人…全員に動機があると同時に、全員にアリバイがあった。そして、全員が沈黙する。

『沈黙のパレード』レビュー

「ガリレオ」の劇場版第3弾……というよりは、東野圭吾の原作を映画化したものに、テレビドラマキャストが参加しているというスタンスの方が正しいのかもしれない。

そのため『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』などは、テレビシリーズと比べてもトーンが少し違ってくるのが特徴的だ。そういった点では、今作は少し全体的な雰囲気は中間的かもしれないが、何より福山雅治が年齢も年齢だけに、落ち着いた普通の大人という感じになってしまっている。

『容疑者Xの献身』の頃は、内容は東野圭吾らしい重いトーンだったものの、まだ毛先を遊ばせていたし、破天荒さは福山雅治の実年齢にリンクして薄まってしまった。それが良いのか悪いのかは、ドラマのトーンの方が好きか、映画のトーンの方が好きかで別れそうでもある。

そんな感じで、湯川というキャラクターに対してのおもしろさは感じられないものの、その代わりに北村一輝演じる草薙を中心とした警察事情が深堀されており、そこを焦点として観れば、今回もなかなか重圧な物語となっている。

草薙が過去に担当した事件で、限りなく黒に近い容疑者が証拠不十分で無罪となり、その容疑者が新たな犯罪を犯し、被害者を出してしまったとしたら、それは警察や法のあやふやさが作ってしまった犯罪でもあるからだ。しかし、その一方で、ひとつ間違えば冤罪になる可能性もある。

その境界線で葛藤し、苦しむ警察という組織、そのあり方を体現するのが、今回は草薙ということだ。

警察の視点ではなく中立な湯川と草薙の少しドライでも確実に互いを信頼しあっている友情が、なかなか踏み込みづらい問題を暗示しているようでもある。

そこに柴咲コウ演じる内海の警察組織に染まり切っていない独特の視点が加わることで、暗くなり過ぎない雰囲気が構築されている。ちょっと詰めが甘いのも気になったりはするが、それも含めて、今回は雰囲気的にはドラマ版と映画版の中間的になってると言った要因だ。

とはいえ、東野圭吾らしい倫理観が迷子になる人間ドラマであり、さらに皮肉の効いた結末は健在で、良い意味で消化不良な気持ち悪さは残る。

点数 85

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