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この映画語らせて!ズバッと評論!!『アキラとあきら』池井戸作品ならではのリアリティが炸裂!真面目な”半沢直樹”

この映画語らせて!ズバッと評論!!『アキラとあきら』池井戸作品ならではのリアリティが炸裂!真面目な”半沢直樹”

作品情報

父親の経営する町工場が倒産し、幼くして過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛。 大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、血縁のしがらみに抗い続ける階堂彬。 偶然同じ名前を持った二人は、運命に導かれるかのごとく、日本有数のメガバンクに同期入社する。 だが、人を救うバンカーになりたいという熱き理想を持つ山崎と、情を排除して冷静沈着に仕事をこなす階堂は、銀行員としての信念が真っ向から対立する。ライバルとしてしのぎを削る二人だったが、山崎は立ちはだかる<現実>という壁を前に、自らの信念を押し通した結果、左遷される。 一方、順調に出世していた階堂の前にも、親族同士の骨肉の争いという試練が再び立ちはだかる。階堂は<現実>から眼を背け続け、ついに階堂家のグループは倒産危機に陥る。 グループの全社員とその家族4800人の人生が掛かった危機的状況の中、 山崎と階堂の人生が再び交差する———

『アキラとあきら』レビュー

「半沢直樹」や『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』などでお馴染みの池井戸潤原作による男臭いお仕事映画。

キャストの男率が多いことで、時代錯誤な感じがするかもしれないが、舞台となっているのが2000年代ということで、まだまだ特に銀行においては女性の社会進出がそれほど多くなかったという部分で、当時を描くうえでは、それもリアルなのかもしれない。

今作の主人公は銀行員。銀行の融資が断ち切られ、工場が倒産したという生い立ちが「半沢直樹」と似ているが、決定的に違うのは「歌舞伎臭」がしないところだ。

それはドラマ版においてのクセの強い演出によるもので、そもそも原作にそんな要素もないのだが、『七つの会議』でも、そんな歌舞伎臭をプンプンさせていただけに、それを期待していた人は物足りないと思う部分も正直あるかもしれないが、池井戸作品の醍醐味は、何といってもリアリティである。

元銀行員であり、小説家になる前はビジネス本を執筆していた経験もあるだけに、池井戸作品は、とにかく細部の拘りが徹底している。実際の銀行員が見ても息をのむほどのクオリティである。

歌舞伎臭がしない代わりに、池井戸作品のリアリティの中にある人間臭さだったり、ロマンというものが、より直接的に感じられる作風に仕上がっていて、少々ベタではあるが「ここで泣けっ!」といったような泣かせ所が満載。制作サイドの狙い通りに感動させられてしまうのは癪にさわる部分もあるが、素直に池井戸作品に浸れる、そんな作品だといえるだろう。

同じ名前であっても、真逆の環境で育ち、真逆の信念をもつ山崎瑛と階堂彬は、「理想」と「現実」のメタファーともなっており、それが交差するのも銀行というものであり、日本にとって銀行というものの役割、そしてどうあるべきなのかを改めて考えさせらるし、こういう人材が育てば未来の日本経済も明るくなのではないか……とそこまで感じさせてくれるのは、見事な構成力だ。

邦画としては、エンターテイメント性も含めて、今のところ今年ベストな作品!

点数 90

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