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この映画語らせて!ズバッと評論!!『わたし達はおとな』これが現代の若者たちのリアルな姿だとしたら…恐ろしいと思う。

この映画語らせて!ズバッと評論!!『わたし達はおとな』これが現代の若者たちのリアルな姿だとしたら…恐ろしいと思う。

作品情報

大学でデザインの勉強をしている優実(木竜麻生)には、演劇サークルに所属する直哉(藤原季節)という恋人がいるが、ある日、自分が妊娠していることに気付く。悩みながらも優実は直哉に妊娠と、ある事実を告白する。直哉は将来自分の劇団を持ちたいと願っていた。現実を受け入れようとすれば、するほどふたりの想いや考えはすれ違っていく…。まるで隣の男女の生活を覗き見しているような不思議な映画体験で私達をスクリーンに釘付けにし、その切迫感と「圧倒的にリアリティのある日常」を突き付ける本作。同じ時を過ごして、お互いを求めたあの時、そして今、お互いが分からなくなって…過去と現在が行き来し、感情のグラデーションが胸に迫る、これまでに見たことのない恋愛映画が誕生した。

『わたし達はおとな』レビュー

自然な空気感の中で、サバザバとしていて、ちょっとずつズレた感覚を持った男女の関係が描かれていくが、会話のトーンも映画的ではなく、日常会話を盗み聴きしているようだ。

劇的に演出されたものではなく、普通の男女を描いていくことで共感をもちらすテイストの作品は、『ちょっと思い出しただけ』や『愛がなんだ』など、近年は多く制作されている。

しかし、今作は空気感は日常的なのに、描いていることは昼ドラのようなもの。「はたして、これはリアルなのだろうか?」といったように、今まで信じていた倫理観が揺さぶられるような、不思議な感覚をもたらしている。

そんな昼ドラみたいなことが現実にないとはいわないし、確実にあるのだろうが、自分の恋人が別の男の子どもを妊娠したとしたら……という、ドラマや映画なら劇的に演出され、コーティングされていそうなものが、あたかも自然に描かれると、自分の倫理観の方が現代からズレているのだろうかと不安になってくる。

自業自得な部分もあるし、浮気して妊娠までしたのだから、攻められても仕方ないとは思うものの、男側も浮気していたり、主張がズレていたりするから、感情移入するキャラクターが常に定まらない。

通常の映画やドラマであれば、それもフィクションだから~と、どこか安心できるものが、日常感満載で描かれるものだから、観ている側もそわそわさせられてしまうし、現代の若者たちは、学生たちは、これがリアルなの?と思うと、恐ろしさすら感じてしまうほど。

また、一方が最低な人間という設定の作品はたくさんあるが、男女のどちらにも共感できないというのは、なかなか珍しい作品でもある。

互いの理不尽な自己主張から喧嘩に発展する流れを繰り返すふたりからは、現代の倫理観の破綻をも連想させる部分もあり、どういった結末に向かっていくのかが全く想像できない。

いつも一緒にいて、仲は良いのだろうが、他人は他人、面倒なときは切り離すといった友達関係の薄っぺらさも浮き彫りになったりと、心のより所や救いがないというのが、ここまで悲しいことだと実感するし、それに気づいてすらいない主人公たちを観ているのも、また辛い……。

点数 80

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