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この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)ある日、親友が自殺した。そもそも親友だったのだろうか……『マイ・ブロークン・マリコ』

この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)ある日、親友が自殺した。そもそも親友だったのだろうか……『マイ・ブロークン・マリコ』

作品情報

ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失とするシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けたダチ親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。

『マイ・ブロークン・マリコ』レビュー

©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

ある日、親友が自殺した。

そもそも親友といえる関係だったのだろうか……。

答えを聞けない一方通行の想いのままに、親友の遺骨を抱いて、いつか行こうと約束しながらも結局行けなかった2人旅を実現させようとする。

何気ないことや、見た風景が、学生時代と大人になってからの記憶が断片的にフラッシュバックされていくことで、観客もマリコという、どこか不思議な女性の存在を知っていくことになる。

特に大人になってからは、日々の生活の中で会う機会も減っていき、面倒な存在として感じていた。マリコはトモヨを親友以上の存在として認識していたが、トモヨはマリコをどんな存在だと思っていたのか、それさえも確信をもつことができない。

そんなあやふやな関係性だったから、自殺のサインに気付けなかったのではないだろうかと後悔しても、もうマリコはこの世界にいない。

マリコが死んだことは、ある一人の死として扱われ、何もなかったように時間が進んでいく、トモヨの中でもそうなっていくのが不安で怖い。

喪失感、イラ立ち、悲しみ、後悔などなどの様々な感情が混ぜ合わさって、自分自信もマリコの死にどう向き合っていいのかがわからない。成り行きと感情にまかせて遺骨を奪ってきたものの、どうしていいのかもわからない。

行き場のなく、静かでシンプルなロードムービーではあるが、トモヨがマリコの死に対して、自分なりの折り合いをつけていく上質な物語だ。

同じタナダユキ監督作品としては、『浜の朝日の嘘つきどもと』も残された者の生き方とは……。というテーマが描かれており、悲しんでいるだけでは、生きていくことができない現実と、時間の流れにどう折り合いをつけていくかという点において共通点もあったように思える。そういった作家性なのだろう。

出演者のことをいうと、永野芽郁は『ピーチガール』や『秘密の花園』では、隠れヤンキーのようなキャラクターを演じていたが、ここまで全力ヤンキー気質のキャラクターは初めてではないだろうか。

また奈緒が『彼女来来』や『君は永遠にそいつらより若い』などでもみせた、独特の異質感が全力で発揮されていた作品だといえるだろう。

点数 83

©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

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