ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『バビロン』これがもしミュージカルだったら最高のエンターテイメントだが、人間ドラマを描こうとしているから……

この映画語らせて!ズバッと評論!!『バビロン』これがもしミュージカルだったら最高のエンターテイメントだが、人間ドラマを描こうとしているから……

作品情報

1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る、新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)と、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)が、運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし時は、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は、大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。果たして3人の夢が迎える結末は…?

『バビロン』レビュー

(C) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ハリウッドにおける無法地帯だったといわれるプレコード時代、つまり1920年代のサイレントからトーキーへの移り変わり、今までの映画という概念が一気に変わり、求められるものも劇的に変化した時代だ。

今作はそんな激動の時代を背景に、映画とひと言に言っても俳優やプロデューサー、監督、批評家などなど……複数の業種の人々によって作られるものだ。

そんな業界に生きた複数の人物の視点を交差させながら、時代の変化を描いているが、バランス的にそこまで偏りがない。逆に視点が多すぎて視点が定まりきれていない分、細かい部分は時代背景を知っていないと置いていかれるスピーディーなエンターテイメント。

エンターテイメントとしての画作り、色彩的な側面からは、デイミアン・チャゼルらしい見事な世界観の構築だといえるが、時代を切り取った作品としての価値は薄く、リスペクトとは程遠いものとなっている。

仮にこれがミュージカルであるとすれば、薄口のドラマ性でもノリと勢いだけで突き進めるのだが、あくまで人間ドラマを見せようとしているものだから、その粗が目立ってしまう。『ラ・ラ・ランド』が中途半端なミュージカルだったからこそ今作を本格エンターテイメト・ミュージカルとする心意気であれば高く評価もできるのだが、ミュージカルに向いてる題材をミュージカルにしないところにセンスをおかしさを感じずにはいられない。

冒頭の酒池肉林なパーティーシーンから始まることもあって、後半の時代的トーンダウンには悲しさが残り、ハッピーになっている人が極端に少ないように描かれているのも視点が偏りすぎているというか、自分から望んで目指した業界のはずなのに、ハリウッドに飲み込まれた結果として手も足も出せない状況、チャゼルが置かれている状況が実はそうだと言わんばかりにかなり遠回しに描いている点も気になる作品だ。

一番鼻につくのは、チャゼルの作品には欠かせない作曲家のジャスティン・ハーウィッツが参加しているからといって、やたら『ラ・ラ・ランド』の楽曲をサンプリングしたものが多様されている点だ。しかも悲しさが込み上げるシーンに使用されているものだから、どういった趣旨で使いまわしているのかが理解できない。

例えばハリウッドを題材とした、『バビロン』と『ラ・ラ・ランド』の中間的作品を撮る気があって、それが大規模なミュージカルとし、「デイミアン・チャゼルのハリウッド3部作」とするのであれば、全体を通しては今作の評価はまた変わってくるかもしれない。

ブラッド・ピットやマーゴット・ロビーらの演技は見事だし、シーンごとに見どころもそこそこある作品ではあるが、全体像としてはなかなか難点の多い作品だ。

(C) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

点数 80

(C) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事