作品情報
ロンドンの夕暮れ時。ひとりの男とひとりの女が、孤独の中で愛と人生について、思いをめぐらせている。ふたりはビル(ラミン・カリムルー)とキャサリン(サマンサ・バークス)。翌日の朝に離婚調停の審理を控えた、結婚10年目の夫婦だ。明日の朝にはすべてが変わってしまう。こんな日を迎えるなんて、あのときは夢にも思わなかった。幸せいっぱいだった、10年前のあの日には……。
『トゥモロー・モーニング』レビュー

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映画・舞台版『レ・ミゼラブル』や舞台版『アメリ』といった、ミュージカル映画も舞台経験も豊富なイギリスの女優サマンサ・バークスが主演ということで、歌唱シーンのクオリティは言うまでもない。友人役として「Xファクター」視聴者であればお馴染みのアディクティブ・レディーズの元メンバー、フラー・イーストが参加しているのも注目点だ。
さらに監督のニック・ウィンストンや脚本、音楽のローレンス・マーク・ワイスといったオリジナル舞台版を手掛けたクリエイターたちが、そのまま今作も手掛けており、舞台版と違った展開と結末。
そして追加された楽曲で現代風にアレンジされていて、舞台版を知っている人も、ただの映画化ではなく、ニューバージョンとして楽しめるようになっていりながら、作品自体のメッセージ性はブレていないという絶妙なバランスで構成されている。
夫婦の10年間の物語ではあるが、ダイジェスト的に描くのではなく、結婚前夜と10年後の離婚前夜を描くことで全てを感じさせる手法は見事。仕事と私生活において情熱があった日々となくなってしまった日々を対比として見せているのが、人生の劣化を描いているようで辛い部分も多い。
出会いと別れが逆行する『ラスト5イヤーズ』や修復不可能な夫婦関係の末路を描いた『マリッジ・ストーリー』の要素もありつつ、戻れない日々への虚しさや空白感などがしみじみと伝わてくる。
皮肉的にするなら、もっと暗い話にもできたかもしれないが、今作は皮肉と同時に「再生」も大きなのテーマとなっていることから、人生に情熱を取り戻すまでのサクセスストーリーとしての側面もあるのだ。
扱っているテーマは暗い感じがするかもしれないが、観終わった後には何か大切にものが心に残るような、そんな作品だ。
点数 86

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