作品情報
ウラシマトンネル――そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。ただし、それと引き換えに…… 。掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。 これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語。
『夏へのトンネル、さよならの出口』レビュー
ライトノベルというのが「軽い」というそのままの意味で言うのであれば、まさにそれを感じさせる作品である。
今作は共通の目的によって関係をもった男女の純愛映画であって、物語の進み方自体は悪くはないのだが、常に感じることは、現実の恋愛に無縁の人が書いているような作品だということ。
関係性の構築がファンタジーやSFによって成り立っているというのは良いとしても、核となる人間ドラマ、恋愛ドラマは現実的な人と人との物語になるわけだが、今作はそこに関しても強引に押し通してしまっているのだ。
「SFやファンタジーだから、細かいことはいいだろっ!」と思うかもしれないし、それはその通りで、ある程度のふんわり設定は別に気にならないのだが、今作が描いているのが、あくまで「恋愛」ということが、その欠点を際立せてしまい、逆にノイズとなっている。
時間を超えた愛と言えば聞こえがいいが、世界に存在しているのは2人だけではないわけで、他者も存在していることを忘れてはいけない。
例えば何年も行方不明になっている間、友人は?親は?どう思っているのか、その場を埋める説明をしているとも思えないし、未解決事件のように放置されているわけで…..というように、なかなかつっこみ所というか、純粋な疑問点が山ほどある作品で、その都度「それはとりあえず置いておいて……」と言われているようで、描くべきことからことごとく逃げているとしか思えない。あえて描かないのではなく、描く技量がないのだ。
そして何より、たどり着く結論がシンプル過ぎて、「そんなこと早く気付け!」と言いたくなる。
この作品の中には、バカな人しかいないのか??
この描き方だと世界と決別した男女の物語となっていて、どんどん社会不適合者の道を進んでいる。つまり今作に登場する「ウラシマトンネル」というのが、現実逃避と社会不適合者を作り出すものというホラー的結論に達することになってしまう。
原作の悪い部分を修復してこそ映画化の意味があるというのに、バカ正直にそのまま作ってどうする!!
ちゃんとした脚本家を入れるべきだった。
点数 70
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