
作品情報
国王とヒーロー、2つの顔を持つティ・チャラを失ったワカンダ国に海の帝国の脅威が迫る。ティ・チャラの妹であり天才科学者のシュリたちは、この危機にどう立ち向かうのか。そして、新たな希望となるブラックパンサーを受け継ぐ者は誰なのか…。未来を切りひらく者たちの熱き戦いを描いた、ドラマチック・アクション超大作が始まる。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』レビュー

チャドウィック・ボーズマンが2020年8月に亡くなり、その死を作品にリンクさせることで、演出だけでは表現できない、正真正銘の喪失感と悲しみが作品自体をより重圧なものとしているのだが、何か足りない気がしてならない。
設定上は、病気で亡くなったことになっているが、病名は明かされていない。最新テクノロジーや神秘的な力をもってしても、病気には勝てなかった。サノスとの戦いを経て、さらに信じていたものが通用しない。
そんな絶望的な空気がワカンダという国の全体を覆っていて、課題点は山住といったところだが、長尺を使っていながら処理しきれていないのが、今作を全体的にもやもやさせているものの正体だ。
ワカンダという国には、ヴィブラニウムという資源があり、それを巡って資源戦争の危機が常に起きている。コンゴなんかにも通じる問題だ。さらに移民問題など人類が抱える問題をダイレクトに扱っていることからも現代社会と密接にリンクしている。よってマーベル作品の中では、「キャプテン・アメリカ」系列の作品に次いで、政治的な側面を描くものとして活用されてきた。
ところが今作は、政治的な側面の描き方が全体的に緩く、説得力にかけるのが難点。リーダー不在の国がどうあるべきかに尺を使い過ぎているわりには、何も前に進んでおらず、結局のところ、「少しずつ考えていくしかないじゃないか……」みたいなあやふやな回答でしかない。現実的に答えの出ない問題を扱っているのだから仕方ないにしても、もう少し前向きなものを提示してくれても良かったのではないだろうか。
政治的な側面が緩くなってしまった今作においては、重要視すべき点は、やはりシュリが後を継ぐのか、どうなのかという点だ。シュリというキャラクターは、サポート的立ち位置に徹してきたわけなのだから、ただスライド式に直径であるシュリが継ぐべきというのは単純な話にはできないわけだからこそ、もうひとりブラックパンサーの候補的な存在を置いておくべきだった。
今回の場合、ナキアがそれに適していたように思える。しかし、ナキアは別行動をし過ぎてブラックパンサーの候補から早々に離脱していたように感じられる。その気がないにしても、構造上で少しくらい匂わせておいてもよかったのではないだろうか。
新キャラクターとして登場するサブマリナーことネイモア。当初は『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で登場するのではないかなど、何度か登場が噂されてきた原作においての重要キャラクターがついに登場といったところで、原作通り足首の羽があるビジュアルにも納得できた。
それに加え、演じているのがメキシコ系のテノッチ・ウエルタということもあって、1作目でざっくりと描かれていた移民問題にがっつりと着手するのかと思いきや、これまたざっくりだったことには驚くしかなかった。
今回、扱うべきテーマが多すぎて、逆に処理しきれていないというのが最終的な印象。時間を使っているからこそ、その粗が浮き彫りになってしまっているのだ。
点数 83

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