作品情報
『建築学概論』のイ・ヨンジュ監督が挑む、韓国映画史上初めてクローン人間を題材にしたSF大作 家を建てる過程を、人を愛する過程になぞらえ、初恋のときめきを生き生きと表現して、2012年公開当時、恋愛映画として歴代最高興行を達成。全国に初恋シンドロームを巻き起こした『建築学概論』のイ・ヨンジュ監督。本作では、映画的な想像力を発揮できる「クローン人間」というアイテムを使い、死ぬことのない存在のクローンと死を目前にした1人の男のロードムービーを通して、人間が恐れる「死」と、求める「永遠の命」について描くことに挑んだ。「両極端な状況に置かれた2人の男が険しい旅路で人間の宿命ともいえる死の恐怖を克服し、人生と向き合う過程を描きたかった」と語るイ・ヨンジュ監督は、狭い実験室で永遠という時間に閉じ込められたクローンのソボク、そして死を目前にして生涯最後の任務を引き受けたギホンの2人が、少しずつお互いを知り変化し成長する過程を作品に深く盛り込み、SFというジャンル性を持たせながら、感動的な人間ドラマを観客に伝えることに成功した。
先取り版とは?
私、映画評論家バフィーがマスコミ試写で、いち早く観て評論する先取り版です。通常回では、公開日もしくは前後に更新していますが、毎週10本以上の新作を観ていて、量が多く大渋滞状態ということもあって、先取りもしていきます。
ダメな作品はダメと言いますが、基本的にネタバレを垂れ流して、映画自体を観なくてもいいような評論はしません。
『SEOBOK/ソボク』レビュー
「生きる」こととは何なのか?というテーマは今までも何度となく、様々なアプローチで描かれてきた。
今作で扱うのは、余命わずかなエージェントのギホンと、人類が「不死」というタブーに触れる鍵を握るクローン実験体ソボクの全く異なる2人の「生きる」ことへの想いが、行動を共にすることで、リンクしていく構造が切なくも美しい。
人間のエゴによって作り出されたクローンは、人間と同じ人体構造であるがゆえに、いかに「人間らしさ」がある様に作られるが、いざ誕生したクローンに対しては「人間らしさ」は求めず、物のように扱う。
クローンを扱った作品としては、カズオ・イシグロ原作で日本でも海外でも映像化された『わたしを離さないで』やスカーレット・ヨハンソンとユアン・マクレガーが共演した『アイランド』だったり、最近もウィル・スミス主演の『ジェミニマン』なんて作品もあったりするが、人間とクローンのどちらかに視点が偏った作品が多かったと感じていたが、今作は絶妙なバランスで描かれている。
人間のエゴを象徴するクローンだからこそ、様々な想いや人間の醜さが交差する中で、ギホンもまた、当初はクローンを物として扱っていたが、護送する際に垣間見える無邪気な子供のような表情や言動から、人間が日々の生活で麻痺して、感じなくなっている身近な感動の数々をソボクの目線を通して感じはじめ、改めて「生きる」ということについて考える場を与えられる。
ソボクを演じたパク・ボゴムという俳優は、もともとベビーフェイスな俳優であることも、ソボクの純粋な表情を表現するうえで機能しているし、不安フェイスが得意なコン・ユの存在も切なさを際立たせていて、キャスティングもなかなか上手くいっている印象が強い。
ソボクは重力と圧力をコントロールする特殊能力を持っているという設定からも、ソボクを巡って3つ巴な奪還劇という、アクション・エンターテイメントとしての側面もあるいるというか、本来はそちらの要素の方が強めで制作された作品であることからも、最新の映像技術で表現されたエフェクトの数々は見応えがある。
CREDIT
監督:イ・ヨンジュ『建築学概論』『不信地獄』
出演:コン・ユ『新感染 ファイナル・エクスプレス』『82年生まれ、キム・ジヨン』
パク・ボゴム 『⻘春の記録』『コインロッカーの女』
チョ・ウジン 『国家が破産する日』『インサイダーズ/内部者たち』
チャン・ヨンナム 『国際市場で逢いましょう』『メタモルフォーゼ/変身』
2021年/韓国/カラー/シネマスコープ/DCP5.1ch/114分/原題:서복
©2020 CJ ENM CORPORATION, STUDIO101 ALL RIGHTS RESERVED
公式HP:seobok.jp
7月16日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
点数 80
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