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この映画語らせて!ズバッと評論!!『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』まさかの後半まで変身しない戦隊ヒーロー映画!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』まさかの後半まで変身しない戦隊ヒーロー映画!!

作品情報

ギラの国王就任の儀・戴冠式が行われる中現れたのは、“死の国=ハーカバーカ”への案内人・デボニカ。彼女によるとシュゴッダム国王が即位する時、ご先祖様に会いに行かなければならないという。こうしてギラたちのハーカバーカの大冒険が突如として始まった!彼らを待ち受けていたのは、ハーカバーカを統治するシュゴッダム初代国王・ライニオール。かつてチキューを救った“初代国王“と”新国王“による王座をかけた戦いが、今始まる!

『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』レビュー

公開日に一回観て、入場特典がライドケミートレカに切り替わるタイミングでもう一度鑑賞して改めて思ったのは、今回の戦隊ヒーロー映画はかなり攻めているということ。

毎年恒例の「仮面ライダー」と「スーパー戦隊」の夏映画枠というのは、あくまで「仮面ライダー」がメインで、「スーパー戦隊」は子どもたちのテンションを盛り上げるための前座という位置づけに等しい。

そのため『爆竜戦隊アバレンジャー DELUXE アバレサマーはキンキン中!』や『魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁』なども、とにかく冒頭から変身して敵と戦い、単純なストーリーを間に挟むが、最終的には映画限定メカと合体して敵を倒すというのがお決まりだったりする。作品によっては限定メカが登場しない場合もあるが、テンション的には変わりない。

それはスートリー性の強かった「侍戦隊シンケンジャー」の『侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦』や「百獣戦隊ガオレンジャー」の『百獣戦隊ガオレンジャー 火の山、吼える』といった作品も劇場版ではそのテンションの枠組みにはめられてしまっていたし、尺的なことを考えても仕方ない部分があった。

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーロー』に関しては、違った意味で枠からははみ出ていたが……。

ところが今作は、そんな戦隊ヒーロー枠の常識を打ち破る作品となっていて、冒頭から変身しないし、敵も出てこない。

まさかのスートリー重視作?!!!!!!

声優の佐倉綾音が演じるデボニカが突然登場して、物語に導く強引さは尺的に仕方ないとしても、テレビシリーズの20話と21話の間に位置する、つまり20.5話となっていて、がっつりとテレビの延長線上のエピソードになっている。

暗黙のルールとして、劇場版とテレビシリーズはあくまで分けてきたわけだが、近年になって「仮面ライダー」シリーズがそれを破りはじめ、ついには戦隊ヒーローもそうなってしまったというのは、正直どうかと思う。

キングオージャーのハイテンションな活躍を観ることで、「仮面ライダー」に意識を集中させたい子どもたちを裏切るかのようにマイペースな作品が展開されるため、夏映画枠の立ち位置としては失格かもしれないが、作品としては、今までで一番攻めているのではないだろうか。

死者の国ということで、初代の王ライニオールが登場するが、このキャラクターも別に「悪」というわけではなく、復活して民を救いたいと願うヒーロー寄りの意識を持っているのだが、資本主義的な考え。

一方でクワガオージャーことギラは、権力者だけが力を持つ世界が許せないという共産主義的な考えを持っている。

つまりこの作品は、テレビシリーズもふくめて、資本主義と共産主義の対決を描いているのだ。その間に、従来の戦隊ヒーローの枠に収まるような「宇宙征服」的な考えをもった敵が立たされている。

相手が相手だけに、「しゃらくせぇ!」といって変身しての武力行使ではなく、あくまで人間体のままで物語が展開されるのも斬新。

クライマックスはテンションで押し切る部分はあるが、開始20分しても変身しなかった戦隊ヒーロー映画は初めてではないだろうか。

「仮面ライダー」を観に来た子どもたちが、今作で飽きてしまう可能性がないとは言い切れないが、今年の夏映画枠は逆に『仮面ライダーギーツ 4 人のエースと黒狐』の方が子ども向けなノリだったこともあって、最終的にバランスはとれているのでは??

点数 79

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