作品情報
『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』で世間を騒がせた「ボラット」の続編映画がアメリカ大統領選を前にして緊急リリース。前作の影響で国の裏切り者という烙印を押され、終身刑で服役になってしまったボラットだが、極秘任務として大統領に呼び出され、再びアメリカに渡ることとなる。前作と同じくボラットを演じるのは、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『ブルーノ』などのコメディの他にも『シカゴ7裁判』といった社会派な作品に出演するサシャ・バロン・コーエン。
『続ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』レビュー
何故、今ボラットなのだろうか…大統領選より前にどうしてもリリースしたかったというのは観れば納得できるし、新型コロナウイルスをここまでタイムリーに取り入れたアメリカ映画は今のところないと思われる。
今回は『スキャンダル』『俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員!』のジェイ・ローチが製作から降りてるため、政治色はやや弱め、差別表現も酷いが少し丸くなっている感じがしないではない。
言うまでもないが実際の国のカザフスタンとは全く関係なく、今作のカザフスタンは架空の国のようなものとして扱われている。前作でカザフスタンが誤解されると国際問題にも発展しかけたが、「たかがコメディ映画に腹を立ててどうする!」ということで事態は沈静化した。
今回はその事実も少し取り入れられていて、前作でカザフスタンのイメージが低下し、国で人気者であったボラットは犯罪者として逮捕されていた設定とされていて、みんなから嫌われている。
そもそもボラットとは何なのか、ということだがボラットを演じるサシャ・バロン・コーエンはケンブリッジ大学を卒業した秀才でおバカなキャラクターではあるが実は政治的なものや差別問題、国に隠された闇を浮き彫りにしていくスタイルのコメディ俳優である一方で本格的な舞台の経験者でもあり、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』『レ・ミゼラブル』などのミュージカル映画にも出演している。
リッキー・ジャーデイヴィスやサラ・アレクサンダーなども出演していたイギリスのテレビ番組『The 11 O’Clock Show』の1コーナーとして誕生し、のちに『Da Ali G Show』として単独番組も制作された人気キャラクターの白人なのに黒人かぶれのラッパーという設定のアリ・Gだが、その『Da Ali G Show』から更に誕生した新キャラクターが「ボラット」なのだ。
ボラットというキャラクターは、番組終了後も映画の影響などもあり、様々な番組やメディアに登場しては、世間を騒がせていた。キャラクター映画というと、日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、タイラー・ペリーの「マディアおばさん」シリーズや少し前だとオースティン・パワーズなども挙げられる。ちなみに日本でも矢島美容室などがある。
映画の中でもメタ的なネタともされている通り、映画が公開され、ボラットというキャラクターが世間に知れ渡ってしまったということで、当時みたいな半ドキュメンタリー要素はかなり薄れているようにも感じられるが、リスペクトしているフリをして、自爆させるという痛烈な批判をするスタイルは健在ではある。
しかし、今回は娘が登場することで、親子愛に尺を使用しているため、前回のキャラクター映画と社会風刺の中間的スタイルと比べると、キャラクター映画色、コメディ映画色が強くなってしまっている。
前作の淡々とした感じが嫌だった人にとっては、ある程度のストーリーラインがしっかりしている今作の方が観やすいかもしれない。
大統領選を控えたルディ・ジュリアーニ本人が登場するのも衝撃ではあるが、トム・ハンクスが何故、本人役で出演しているのか…この理由は衝撃だった。
点数 85
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