ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『Winny』Winny事件を通して刑事司法の闇とおかしさに迫る法廷劇

この映画語らせて!ズバッと評論!!『Winny』Winny事件を通して刑事司法の闇とおかしさに迫る法廷劇

作品情報

2002 年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法アップロードした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004 年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう。しかし、運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する……。

『Winny』レビュー

去年公開された『ぜんぶ、ボクのせい』では親の愛を知らない少年を通して、型にはまらない人間を人として認めようとしない社会システムの在り方などを描いていたことからもわかるように、松本優作という監督は、常に現代社会の闇を浮き彫りにしてきた映画人である。

今作では2002年に逮捕者を出し、話題となった「Winny事件」を題材としながらも、そこで描かれるのは刑事司法の在り方、そして人の人生を簡単に奪ってしまう冤罪事件というものの残酷さを容赦なく描いている。

警察が正義なのか、法が正義なのか、「Winny事件」と並行して警察組織内で暗黙のルールと化した腐敗も同時に描かれることで社会の矛盾を浮き彫りにしていくスタイルは、松本優作監督らしいといえる。

作中に「ナイフが殺人に使用されたらナイフを作った者は犯罪者なのか」という印象的なセリフがある。まさにその通りで、悪いのはシステムを悪用した者であって、犯罪のために作ったわけではない開発者も同じく悪とされてしまうことは、単純に考えても理不尽としか言いようがない。

しかし日本という国は、疑わしきもの、自分たちが理解できないものというのは、根こそぎ刈り取ろうとしてしまう。現在でさえ、まだまだ問題視されているというのに、2002年頃というのは、警察自体がネット犯罪の知識も今以上に無い悲惨な状況であったことは間違いない。

「Winny事件」によって可能性を潰されしまったのは、今作の中で描かれている当事者たちだけではなく、新たなシステムを開発しようとするエンジニアやスタートアップ企業なども同様だ。

優秀な人材たちの挑戦を、恐怖と不安で歯止めをかけてしまったことは、日本の歴史のうえでかなりのマスナスであったといえるだろう……。

点数 85

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事