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この映画語らせて!ズバッと評論!!『前科者』保護司という職務ではありながら、その一線を越えてしまうほどの佳代の優しさが心の傷を癒す!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『前科者』保護司という職務ではありながら、その一線を越えてしまうほどの佳代の優しさが心の傷を癒す!!

作品情報

罪を犯した者、非行のある者の更生に寄り添う国家公務員、保護司。 保護司を始めて 3 年の阿川佳代(有村架純)は仕事にやりがいを感じ、様々な「前科者」のために奔走していた。 そんな中、佳代が担当している物静かな工藤誠(森田剛)は更生を絵に描いたような人物で、佳代は誠が社会人として自立する日は近いと楽しみにしていた。しかし、誠は忽然と姿を消し、再び警察に追われる身に。一方その頃、連続殺人事件が発生。捜査が進むにつれ佳代の壮絶な過去や、若くして保護司という仕事を選んだ理由も次第に明らかになっていき――。

『前科者』レビュー

「ビッグコミック」で連載されている漫画の実写化作品ではあるが、漫画自体が東野圭吾の短編のようなテイストであることから、映像化しても、ほとんど違和感ないし、地味眼鏡スタイルを最近よく観る有村架純にはハマり役。

ドラマ『前科者 −新米保護司・阿川佳代− 』の3年後という設定ではあるが、基本的な情報は冒頭で説明が入るため、観ていなくても理解することはできる。ただ、 佳代のモチベーションや信念が構築された過程や、主要キャラクターのバックボーンほ知るうえでは、観ておいた方が良いだろう。

特に佳代が保護司になって、一人目の対象者みどり(石橋静河)との友情関係に深みは増すだろう。

今作では、ドラマの中では直接的に描かれず、断片的にフラッシュバックするだけに留まっていた佳代の過去も描かれている。連続殺人事件が並行して起きることで、ドラマと比べて、全体的にサスペンス色やエンタメ色が強く、その中で佳代の過去に経験した事件のことにも大きく触れていくことになる。

こちらもざっくりとしか語られていなかった、佳代が保護司になった理由にも、直接的にリンクしていく。

公務員という枠組みではありながら、同時にボランティアの立場である保護司。ほとんどが年配で、生活に余裕のある人が行うことでありながら、佳代の場合は、コンビニでアルバイトをしている。

あくまで職務という立場上でも、どうしても感情移入してしまい、介入し過ぎてしまう、境界線がゆるい佳代ではあるし、そこは若く保護司としての経験も薄いということも作用しているとは思うが、ドラマの3年後という設定においても、その境界線のゆるさはそのままである。

その職務では無い優しさを感じるエピソードの数々が重なりあっている作品でもある。

工藤誠(森田剛)の物語がメインであり、もう一人の主人公と言っても過言ではない。工藤を通して、救えたはずだったのに、行政や警察の手から漏れてしまった人たちの行く末を描いて、保護司は必要だと感じさせる一方で、保護司の元に辿り着く前に、救えるような社会にならなければ、負の連鎖は終わらないことも痛感する作品だ。

ネタバレはできないが、連続殺人の被害者には、ある共通点があって、その理由も心をえぐられるようなものだが、特にリリー・フランキーが演じている男を殺そうとするシーンに注目してもらいたい。

非情に人を殺していた犯人が、ためらい涙を流すシーンは、どんな関係性であっても、子どもは親のことを怨み切ることができない悲しさが一瞬で伝わるシーンとなっている。

点数 84

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