作品情報
両親が離婚し、母の故郷である山口県の瀬戸内にある小さな島で暮らすことになった小学4年生の凪(新津ちせ)。母・真央と、祖母・佳子と一緒に、佳子が医師をしている島唯一の診療所で暮らしている。普段は明るく振る舞う凪だが、母へ暴力を振るうアルコール依存症の父・島尾の姿が目に焼き付き、心に傷を負い、時々過呼吸になって倒れてしまう。そんな凪を、事情をすべて知った上で何も言わず温かく受け入れてくれる島の住民たち。凪が通う小学校の同級生の雷太や健吾、担任教師の瑞樹、用務員の山村、漁師の浩平。彼らもまたそれぞれ悩みを抱えながらも前向きに生きていた。その悩みを知った凪もまた、彼らを支えようと奔走し、一歩ずつ笑顔を取り戻していく。だが、島での平穏な日々はそんなに長くは続かなかった。島に突然父がやって来て、再び家族に戻りたいと言い出した。その願いを聞いた凪は……。
『凪の島』レビュー
何も変わらない日常を過ごして、元気はつらつと、悩み事なんてないような顔をしている子どもにだって悩みや人には打ち明けられないで抱え込んでしまう想いというのがある。
周りが海に囲まれた島。突拍子もなく、何かから逃げようとしても、その環境がそれを許さない。忘れられるような娯楽要素もない。
楽しみといえば、島の笑わない人を、どうやって笑わせるか……そんな程度である。
のどかな風景だからこそ、平穏ではない出来事をより敏感に感じてしまうのも理解できる。
悩みを抱えた人ほど都会から離れ田舎に移住したがつたりもするが、逆に静かすぎる環境によって、逆にその悩みに直面させられてしまうことだってあるのだ。
主人公の少女、凪も両親の離婚がきっかけで島に移住してきた。
夫婦喧嘩の記憶がPTSDのようなトラウマとなっていて、普段は平気な顔をしていても、ふとしたきっかけでそれが発症してしまう。
そんなとき、凪は海に飛び込むことで心を落ち着かせる。
これが人間が海に戻ることとかけたメタファーなのか、単純に塩水につかることで浄化作用をもたらしているのかはよくわからない。あるいはこの島には逃げ場がないから、強くなるしかないと自分自身に言い聞かせているのかもしれない。
ポスタービジュアルでもわかる通り、凪を演じている子役・新津ちせの大御所感漂う表情は見事としか言いようがない。周りの子役が素人感が漂っていることもあって、余計にそう思えてしまう。
今作は全体的に何気ない日常の中にある大小混合の悩みを描いているだけに、特別大きな事件が起こるということもない。そのため映画としての盛り上がりに欠ける部分があるのは仕方ないと言うべきだろうか。
点数 78
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