作品情報
1980年代、痛烈な歌詞と独特の音楽性で、イギリスのミュージックシーンを席巻した伝説のバンド ザ・スミスの名曲の数々と貴重なインタビュー映像を彩りに、80年代が蘇る。タイトルの「ショップリフターズ」、代表曲の「ゼア・イズ・ア・ライト」、「ディス・チャーミング・マン」、「心に茨を持つ少年」ほか、ザ・スミスの楽曲20曲以上が全編に散りばめられ、メンバーとの関係や、解散について語る若き日のモリッシーを見ることができる。ザ・スミスの楽曲はもちろんのこと、80年代のファッションや空気感を見事に再現し、未来への不安と自分を探して彷徨う5人の若者の刹那を描いた、珠玉の青春音楽映画が誕生した!
『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』レビュー
今作で描かれるてる人間ドラマ自体は、かなりオーソドックスなもので、若者たちの苦悩や葛藤を描いているティーン映画と同じようなもの。ところが今作において特徴的であり、逆にそこに魅力を見いだせるかどうかによっても楽しい映画となるか、退屈な映画となるか……両極端にわかれる作品だといえるだろう
それはすごく単純なことで、ザ・スミスの魅力にハマるかハマらないかによるということだ。
映画的魅力というより、好きな音楽ジャンルであるか、もしくは好きではなかったジャンルやアーティストに触れることで好きになれるかどうかが重要な映画だといえるだろう。
実際にあったとされている、ザ・スミスのファンの青年がラジオ局をジャックして、ただひたすらザ・スミスの曲をかけさせたという事件をベースに描かれているらしいが、事実は不明確である。
『ビッグバン・セオリー』の中でもネタにされていたジョー・マンガニエロが演じるラジオDJ・ミッキーは、メタル好きであって、ザ・スミスには全く興味がないという立ち位置であり、私たちの視点に一番近いキャラクターである。
このミッキーは、ザ・スミスの曲を聴いているうちに魅力に気づいていき、心が揺れていくのだが、その部分にいかに感情移入ができるかどうか……というのが最重要な評価分岐ポイントといえるだろう。
ザ・スミスに限ったことではなく、様々なアーティストに影響された若者たちは多く存在しており、何に影響されるかは本人の自由であって、きっかけ程度ならいいが、強要されるものでは決してない。いかに、自分の趣味・思考を相手や世間に押し付けることの難しさもメタ的に提示しているようである。
『ハイ・フィデリティ』スタイルで、レコード的の中で仲間内でうんちくを言い合うオタッキーな音楽マニア映画ならキャラクター側に感情移入させられたのだろうが、良くも悪くもザ・スミスの楽曲の印象が強く残ることで、人間ドラマがどうなっているのかが、どうでもよくなってきてしまうのは難点だ。
『スコット・ウォーカー 30世紀の男』『BACKSTREET BOYS: SHOW ‘EM WHAT YOU’RE MADE OF』など多くのミュージシャンのドキュメンタリー作家でもあるスティーヴン・キジャクだが、劇映画はあまり向いていないのかもしれない……
2021年12月3日公開!!
点数 75
- 第96回アカデミー賞:映画評論家バフィー吉川の最終受賞予想!事実上『オッペンハイマー』のひとり勝ち状態か?!
- インド音楽界の歴史が動いた!22年ぶりのメジャーガールズユニット”W.i.S.H.”誕生!K-POPに次ぐ世界市場を狙う!!
- この映画語らせて!ズバッと評論!!『マダム・ウェブ』始まらないドラマのプロローグを観ているような感覚になるが、若手女優たちが唯一の救い!!
- 【ちょこっとレビュー】地域復興ムービーとして応援したい気持ちを裏切るほど中途半端な主人公像『レディ加賀』
- “コマンド”シリーズでお馴染みのアクション俳優ヴィドゥユト・ジャームワール最新作『CRAKK-JEETEGAA… TOH JIYEGAA』
コメントを書く