作品情報
中国西南部、周囲を山々に囲まれた街は春節を前に賑わいを見せていた。一方、山では10年を要した高速鉄道を通すためのトンネル掘削工事がようやく終わりを迎えようとしていた。休暇を返上し、工期に間に合わせるために働く技術者たち。地質学の専門家ホン・イージョウもその日、変動し続ける地殻の再調査にあたっていた。ところが、トンネル内で突然の湧水が技術者たちを襲い、街では大規模な地盤の陥没が発生する。やがて2時間以内に地殻変動により山が崩落し、大量の土砂が市街地へ流れ込むことが発覚する。未曾有の危機から16万の住民を救うには山を爆破するしかない!タイムリミットが迫る中、イージョウが一世一代のミッションに名乗りを上げる。
『クラウディ・マウンテン』レビュー
『アルピニスト』や『神々の山嶺』、ウィル・スミスのドキュメンタリー『ウェルカム・トゥ・アース あなたの知らない地球』など、アニメやドキュメンタリーを含め、ここ1か月間で、やたら山に登る映画を観ている気がする今日このごろ……またも山に登る映画だ。
CGは日本の特撮ヒーロー番組レベルではあるし、大半は地味な人間ドラマシーンでつないでいるが、ディザスター・パニックとしては、抑えるところは抑えている。
母の死後、わだかまりがあったままだった父と息子が和解するくだりも、感動ポイントではあるし、デジタルに頼らない昔ながらの職人気質親父が活躍して人を助け出すというのも、ステレオタイプではあるが見応えもある。
10年かけて作ったトンネルを自ら爆破し、人命を救う選択に迫られ、少しゴネるキャラクターもいるが、基本的に企業のトップは人命を優先させようとする。労働者にとっても、これまでの10年間が水の泡になってしまうだけに、人命がかかっているとはいえ、簡単には決断できない、この緊迫感の中、映画の尺をフルに使って決断を下すのかと思いきや、意外とあっさりと人命を優先させる方を選ぶ。
ディザスターというのが前提にあるだけに、人間ドラマはさほど求めないし、うるさく言うつもりもない。しかし、なぜだろうか……物語としては、そうなるのは当たり前のような展開だが、舞台が中国ともなると違和感が残ってしまう。
労働者の人命を消費し、捨て駒のように使ってきた中国が、経済よりも人命を優先するという物語になっている時点で、プロパガンダ臭いのだが、清々しいほどに英雄的決断をするというのもあからさま過ぎてしまう。
権力者が英雄的な行いをすると全てプロパガンダとして観てしまうのも悪いクセなのかもしれないが、エンドロールで労働者たちのニュース映像が流れから……確信に変わってしまう。
所々ワザとらしい演出があるものの、皮肉なことに作品自体は良くできている。
点数 83
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