作品情報
フォトグラファーのジャニスと17歳のアナは、出産を控えて入院した病院で出会う。共に予想外の妊娠で、シングルマザーになることを決意していた二人は、同じ日に女の子を出産し、再会を誓い合って退院する。だが、ジャニスはセシリアと名付けた娘と対面した別れた恋人から、「自分の子供とは思えない」と告げられる。そして、ジャニスが踏み切ったDNAテストによって、セシリアが実の子ではないことが判明する──。
『沈黙のパレード』レビュー
スペインの鬼才ペドロ・アルモドバルの新作にして、毎度のことながら母という存在への強い想いが反映された物語であり、色彩の中心にあるは赤。
アート色の強く、時には監督自身の性的思考や実体験なども強く反映されていることもあり、背景を知らないと難解な部分も多いアルモドバル作品としては、比較的わかりやすい構造で娯楽性も強い。
しかし、それと同時にスペイン人の心の中にトラウマとしてある内戦時のフランコ政権の問題が強く反映されているところは社会派な側面もある。巧妙なバランスの作品だ。
内戦と主人公ジャニスの娘に対する葛藤が、どう反映しているかというと、ジャニスは母であると同時に、内線によって離れ離れになった家族を戻してあげたいという意思も強い女性ということだ。つまり母としての葛藤とスペイン人としての葛藤を闘わせているのだ。その点を踏まえて観ることで、今作をより深く理解できるだろう。
そんなジャニスという女性を体現するのが、『ボルベール〈帰郷〉』や『あなたのママになるために』など、多数の作品において”強い母”を演じてきたベネロペ・クルスだ。
アルモドバルの半自伝的作品の前作『ペイン・アンド・グローリー』でも母としてペネロペを起用していたこともアルモドバル作品と強い繋がりを感じる。
点数 85
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