作品情報
殺処分ゼロの国トルコ・イスタンブールの街で暮らす野良犬たち。ここではまるで風景に溶け込むように、自然に人間と犬が共存生活を送っている。自立心が強くいつも単独行動の犬ゼイティン。フレンドリーで人懐っこく、街ゆく人たちに挨拶を欠かさない犬ナザール。そしてシリア難民の心の拠り所になっている愛らしい表情の子犬カルタル…。彼らの視点で街を見渡せば、人間社会が持つ様々な問題と愛に満ちた世界が同時に見えてくる。ほぼ全編に渡って犬の目線と同じローアングルで撮影され、ごく普通の街の風景さえも新鮮な驚きとなって映し出される本作。地上を視覚的、聴覚的に再構成し、高性能カメラが半年間追いかけた先の、知られざる世界とは――。犬と人間の絆が感動を呼ぶドキュメンタリーが誕生した。
『ストレイ 犬が見た世界』レビュー
最近『グンダ』や東京国際映画祭で上映された『牛』など、動物の様子を淡々と映し出したドキュメンタリー作品が作られているが、今作も犬が主体のドキュメンタリーである。2017~2019年にかけて撮影された。
トルコという国は、野良犬、猫の安楽死や殺すための捕獲を法律で禁止している珍しい国。そのためイスタンブールの町中に犬があふれている。
今作は犬を人間の目線から観察するドキュメンタリーというよりも、出会う犬や人間、建物などが犬の目線から見ると、どう感じるのかを疑似体験する、まさに犬体験映画なのだ。
カメラも犬の目線の高さに拘って、低い位置から撮影されている。
淡々と時間が進んでいくだけではあるが、犬たちの表情は豊かで、行動も見ていて飽きない。関わる人間が物語を運んでくるようで、ドキュメンタリーでありながら、ドラマ性のある作品に仕上がっている。
よりそう感じられるのは、トルコの中でもイスタンブールという、治安の悪さや貧困などの社会問題が蓄積された場所だからかもしれない。テレビや街頭スピーカーから聞こえる政府への不満の声、慌ただしい人々、ゴミがあふれる町、ホームレスの子供たち……
しかし、そんなことは犬たちにとっては、どうでもいいこと。目線を変えさえすれば、人間の抱えている問題など、ちっぽけなものに過ぎないと言われているようであるし、目線が違うだけで、こんなにも世界は違って見えてくるのだ。
あえて難点を言うのであれば、数か所、人間の目線になるシーンがあるのは残念だし、ドラマ性を狙いすぎたからか、カップルの会話のシーンなど、不自然な部分もあったりする。 一貫して犬の目線に拘ってほしかったところだ。
点数 80
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