作品情報
「事故物件住みます芸人」として、実際に9軒の事故物件に住んだ芸人・松原タニシの実体験を記したノンフィクション「事故物件怪談 恐い間取り」を亀梨和也主演で映画化。監督は、「スマホを落としただけなのに」「貞子」の中田秀夫が務めた。売れない芸人・山野ヤマメは「テレビに出してやるから事故物件に住んでみろ」と先輩から無茶ぶりされ、テレビ出演と家賃の安さから殺人事件が起きた物件に引っ越す。その部屋は一見普通の部屋だったが、部屋を撮影した映像には謎の白いものが映り込み、音声が乱れるなどといった現象が起こった。ヤマメの出演した番組は盛り上がり、ヤマメは新たなネタを求めて事故物件を転々とする。住む部屋、住む部屋でさまざまな怪奇現象に遭遇したヤマメは「事故物件住みます芸人」として大ブレークするが……。
『事故物件 恐い間取り』レビュー
池田エライザ主演の映画&ドラマ『ルームロンダリング』では、事故物件に1度誰かが住むことで、告知義務がなくなることをコメディ仕立てで描いていたが、今作はそれのちょっと怖いバージョンのようなものだ。と思っていた。
自分の目指している目標やヴィジョンとは、全く別ルートで有名になってしまったことで、「何かが違う」と感じながらも、今のポジションからは抜け出せない人の苦悩や葛藤というのは、様々な映画やドラマで描かれてきているし、実際の芸能界にも沢山存在している。
芸人だったはずなのに、お笑いではなく、占いやスポーツ、都市伝説、収納術等で名が売れてしまう人も多いし、怖い話といえば、稲川淳二も元々は芸人だったわけだから。
主人公が本来のお笑い芸人としての理念を捻じ曲げてしまって、有名になるためには、「本来の目的などドブに捨ててしまえ!」という精神を突き進むのは、ある意味芸能界・お笑い界という社会に飲み込まれてしまうこと、つまり事故物件の1件1件が主人公の理念を捨てていくメタファーのようにも感じられる。従来のサクセスストーリーであれば、貧乏になろうと、仕事が減ろうと、本来の自分の理念、今作なら「笑いで人を幸せにする」という理念に戻るのだろうが、そこにも戻らず突き進むというのは、実際にはその方が多いのだろうが、映画としては新しい選択だ。 梓もあれだけ嫌がっていたのに、最後は受け入れてしまっている。
こんな娯楽寄りに思えるホラー映画でさえも、社会構造の厳しさを突き付けらるとは…
芸人・松原タニシの実体験をベースにしているということで、ある意味、想像できる範囲内での怪奇体験、恐怖体験がじわじわと描かれる、地味な映画なのだと思っていただけに、クライマックスの展開は全く予想できなかった。
おそらく、ほとんどの人がクライマックスの展開には、かなり驚くと思う。一周回って、今までの物語自体が、映画の撮影だったという『カメラを止めるな!』構造の映画なのかと思ったのだが、そのままストーリーが流れていく。
この後は悪霊ハンターにでもなってしまいそうな勢いで、今まで積み上げてきたものが崩れ去る。ラストは完全に実話じゃないだろうし、ファンタジーに近い。
企画段階で「何言ってるんだよ!真面目に考えろ!!」って言われそうな展開のままゴーサインを出したことが、逆に凄い。
ジャニーズも関わってて、それなりに成功しないと不味い映画化企画だったはずなのに、この冒険的な挑戦は、最低を通り越して素晴らしい!!
「妖怪シェアハウスかよ!」って思ったら、後で知ったのだが、脚本家が正に『妖怪シェアハウス』のブラジリィー・アン・山田ということで、妙に納得ができてしまう。
松原の所属事務所が松竹芸能ということで、松竹芸人やお笑い芸人が多数登場するのは、良いのだが…お笑いパートの酷いクオリティには、呆れてしまって、恐怖シーンよりも寒気がしてくるが、これもある意味、売れないお笑い芸人のリアルな空気感なのかもしれない。
しかし、コウメ太夫の使い方は反則でしょ…
亀梨くんは、明らかに地味な顔立ちじゃないから、服装をやたら個性的にしてごまかしているけど、やっぱりジャニーズが出てしまっているから、ジャニーズでも風間 俊介あたりがよかったのではないだろうか。
ホラー映画として、ある程度のストーリー構造に則った作品として観ると、駄目な映画かもしれないが、映画的構造をぶち壊したものとして観れば、これはこれで一周回ってアリな作品。素晴らしき駄作だ!!
点数 77
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