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この映画語らせて!ズバッと評論!!『マヤの秘密』妻か知らない男……どちらを信じるか?!夫の視点から観る心理サスペンス!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『マヤの秘密』妻か知らない男……どちらを信じるか?!夫の視点から観る心理サスペンス!!

作品情報

1950年代後半、アメリカ郊外の街。ある日、ロマ民族のマヤ(ノオミ・ラパス)は、街で男の指笛を聞いた瞬間、“ある悪夢”が蘇ってくる。最近、近所に越してきたその男は、戦時中に自分を暴行し、妹を殺したナチスの軍人で、マヤがいまでも悩まされる悪夢の元凶だった。マヤは復讐心から男を殺そうと誘拐し、夫・ルイス(クリス・メッシーナ)の手を借りて地下室へと監禁するが、トーマスと名乗るその男(ジョエル・キナマン)は人違いだと主張し続ける。記憶がおぼろげなマヤは、男を殺したい気持ちと同時に、ただ事実を知りたいと罪の自白を男に強要し続ける。一方、男のほうもマヤの話を否定し続けるものの、何かを隠しているような表情をみせる。マヤを信じたい夫は、妻の狂気じみた行動と知らなかった秘密を知り、真実を突き止めようと奮闘する。さらに、監禁された男の妻(エイミー・サイメッツ)は、夫の安否を心配しながらも、自らの素性を話さなかった夫への不信感を募らせる。それぞれの秘密が明らかになるにつれ、新たな疑念が生まれる。何が真実なのか? 彼女の悪夢は《妄想》か? 《現実》か? 最後まで読めない展開は、観客を釘付けにする――。

『マヤの秘密』レビュー

ナチスによって迫害を受けていたのは、ユダヤ人だけではない。流浪の民と呼ばれるロマ族もそうであった。

ナチスによって妹を殺され、自分は死なずに済んだものの、レイプされた過去をもつマヤ。それでも優しい夫と出会い、子供もいて、それなりに幸せだった日常の中で目の前に現れた、マヤをレイプし、妹を殺したナチスの男”らしき”人物。

ここが今作の肝となる部分で、マヤも当時のショックが強すぎて、記憶も断片的で、それが正しいものなのか、それとも幻覚や夢と混合されてしまっているのか……確証がもてないということ。

その記憶の危うさをマヤは理解しつつも、妹の復讐をしたいという気持ちと、自分自身の怨み、思い出したくなくても、思い出してしまう、地獄のような過去のフラッシュバックもあって、とうとう行動に出てしまう。

元ナチスらしき男トーマスを監禁し、拷問するが、それを夫が知ってしまう…….ここから本題に突入。

ナチスだと思って疑わないマヤ、人違いと言い続けるトーマス、その間に挟まれる夫ルイス。3つの視点からの心理描写が描かれるが、観客としては、ルイスの視点から観ることになる。

冷静ではいられず、少し情緒不安定になっているが、愛する自分の妻を信じるのか、それとも拷問され続けていても人違いだと拒否し続け、話の筋もそれなりに通っているトーマスを信じるのか……

周りの人間たちも、トーマスが行方不明になったことで、周りから見張られているような強迫観念にも捉われてしまう。極限の選択を強いられるルイスの心境は、考えただけでも頭痛がしてきそうだ。

そして明らかとなる、ある事実。ところが、この結末はストレート過ぎる部分もあるだけに、どんでん返しを期待していると肩透かしをくらう可能性は否定できない。

戦争の後遺症というのは、目に見えるものだけではない。

心に負った傷あとは、一生消し去ることができない。仮にトーマスを殺したとしても、完全に消すことは無理かもしれないが、少しは気持ちが楽になるかもしれない。しかし、夫を巻き込んでしまったことで、その傷跡を伝染させてしまうことにもなりかねない。

そうやって生まれた、人間に対しての不信感、気づいてしまった自分の中にある狂気性……あらゆる醜い部分を浮き彫りにしてしまうのも、また戦争やジェノサイドの後遺症ともいえるだろう。

点数 79

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