ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!
この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)『ウエスト・サイド・ストーリー』これはリメイクではない!原作に近い再映画化だ!!

作品情報

スティーヴン・スピルバーグ監督が、「ロミオとジュリエット」をモチーフにした<伝説のミュージカル>を念願の映画化。 舞台は、対立するグループによって引き裂かれたニューヨークのウエスト・サイド。運命に逆らい、社会の分断を乗り越えようとした“禁断の愛”の物語が、エンターテイメント史に残る数々の名曲とダイナミックなダンスと共に描かれる。 “異なる立場を越えて、私たちは手を取り合えるのか?”という普遍的なメッセージをこめて贈る、感動のミュージカル・エンターテイメント。

先取り版とは?

私、映画評論家バフィーがマスコミ試写で、いち早く観て評論する先取り版です。通常回では、公開日もしくは前後に更新していますが、毎週10本以上の新作を観ていて、量が多く大渋滞状態ということもあって、先取りもしていきます。

ダメな作品はダメと言いますが、基本的にネタバレを垂れ流して、映画自体を観なくてもいいような評論はしません。

『ウエスト・サイド・ストーリー』レビュー

実は今作は1961年の映画『ウエスト・サイド物語』のリメイクではなく、オリジナル舞台版の再映画化というのが正しい。本編を観るまでは確信がなかったが、間違いなく舞台版に近いものとなっている。

1961年版には、いろいろと問題があった。それは時代が時代ということで、映像表現の限界もあったのと、ハリウッドのヘイズ・コードがまだあった頃だからだ。

内容的に複数がヘイズ・コード該当する中でも、当時としては、かなり冒険的だったこともあるが、ポリコレやコンプラなど、再び規制されつつあるとしても、幅広い表現が可能となった現代では、当時描けなかった表現ができるのは、今作においては、かなりの強みといえるだろう。

ぼやかすしかなかったヨーロッパ系とプエルトリコ系移民問題の中で、アメリカという国に対して、互いにどう感じていたか、どう生きる覚悟をしていたかという繊細にな部分が、より具体的に表現さており、セリフの中にも当時の差別的表現がリアリティを追求するため容赦なく表れている。

ちなみに今年公開された『イン・ザ・ハイツ』 同じ移民問題を描いていることもあって、「ウエスト・サイド・ストーリー」の影響をいくらか受けていることもあって、画的に被る部分もある。

61年版と比べて、よりリアリティと感情移入する場面が追加されているのと同時に、アニータの役の重みが増しており、演じるアリアナ・デボーズの歌唱力とダイナミックなダンスが、圧倒的な画力をもたらしている。

そもそもアニータは単独で歌うシーンがあまりないし、歌唱シーンは 『我が心に君深く』 のベティ・ワンドの吹替えだっただけに、あまり印象に残らなかった役であったが、今作では正直言って、マリア役のレイチェル・ゼグラーよりも存在感がある。

製作総指揮としても参加している61年版でアニータを演じたリタ・モレノが今回演じるバレンティーナは、61年版では男性(ネッド・グラス)の設定だったが、今作ではヨーロッパ系の夫と結婚していた未亡人の女性に変更されている。先人として立ち位置として、若者たちにアドバイスをするキャラクターであることから、少しメタ的な構造ともなっているのは、おもしろい試みだといえるだろう。

何より原作よりも、映画版よりも大きく違っているのは、 エニィバディースの存在である。61年版ではスーザン・オークスが演じていたこのキャラクターは、今でいうトランスジェンダーであるが、61年版では時代的に描くことができず、よくわからない役であった。しかし今作では、そんなエニィバディースが存在感を増しており、具体的にトランスジェンダーもしくは、男性社会に生きようとする強い女性像のようである。今回演じているエズラ・メナスがノンバイナリー俳優というのが証拠だ。

正直なところ、作品自体が、ジェンダー問題をそれほど扱っているものではなく、どちらかというと古典的でステレオタイプな女性像を描いていることもあって、より具体的なキャラクター構造となっていたとしても、物語に大きな機能を果たしているかと言われると疑問が残るが、多様性という面においては、大きく変化した現代的視点ともいえるだろう。

スティーヴン・スピルバーグは非常に大きな成果を挙げてくれたことに違いはないのだが、これはスピルバーグの弱点というべきか、逆にらしいというべきか……恋愛映画に向いていないというのも、同時に感じることができて、ラブシーンの描写が少し物足りないのと、ここは61年版を意識しているのか、妙に映画版に寄り添ったものとなっていて、少し古臭くある。他の部分が現代的だからこそ、より浮き彫りにされてしまうのが残念でならない。

舞台の演出をそのまま映画に取り入れているため、踊り出したり歌い出すタイミングが段取り臭い部分があって、そこがフォーメーションダンスのクオリティを上げているとこは間違いないのだが、ミュージカル好きの中でも、古典ミュージカル派と現代ミュージカル派と別れるのと同じように、今作でも好き嫌いが別れる部分だろう。

メインキャラクター以外にも、『ライフ・ウィズ・ミュージック』のマディ・ジーグラー、『17歳の瞳に映る世界』のタリア・ライダー、『フォッシー&ヴァードン ~ブロードウェイに輝く生涯~』パロマ・ガーシア・リーアリアンナ・ロザリオエロイーズ・クロップ、『Empire 成功の代償』のジャミラ・ベラスケス、『キャンプ』のブリタニー・ポラック、『ハイスクール・ミュージカル』のアナ・イザベルなど、大勢のプロダンサーや歌手がモブ的に配置されていて、一時停止して確認したくなるようなシーンが盛りだくさんで目が忙しい!

点数 92

2022年2月11日(祝・金)全国公開!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事