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この映画語らせて!ズバッと評論!!『17歳の瞳に映る世界』あえてドラマコーティングがされていないストレートな物語だからこそ、心に突き刺さる!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『17歳の瞳に映る世界』あえてドラマコーティングがされていないストレートな物語だからこそ、心に突き刺さる!!

作品情報

愛想がなく、友達も少ない17歳のオータム。予期せぬ妊娠をしたことで、いとこのスカイラーと共にペンシルベニアからニューヨークへ向かう。その旅の中で、彼女たちが常に向き合っている世界が浮き彫りになってゆく。女性であることで感じつづける痛み、女性であることを利用して生きていく機知、弱音を吐かない強がり、ただ寄り添うやさしさ、多くを語らずとも感じられる繋がり……。
少女ふたりの数日間を描いたロードムービーというミニマムな作りながら、どの国にも通じる、思春期の感情と、普遍的な問題をあぶり出し、ベルリン国際映画祭銀熊賞、サンダンス映画祭2020ネオリアリズム賞を獲得するなど世界中の映画賞を席巻! ロッテン・トマトでも99%(2021/4/22時点)の超高評価を得ている。大きな出来事が起きなくても、夢中で彼女たちの行方を見守る……現代を生きる我々の心に刺さる物語が誕生した。

『17歳の瞳に映る世界』レビュー

ⓒ2020 FOCUS FEATURES, LLC. All Rights Reserved.

望んでない妊娠かもしれないけど、旅の途中で観る光景から、母性が目覚めて踏みとどまるといったような、あえてドラマコーティングがされておらず、偽善的なものではなくて、主人公の不安や恐怖、罪悪感(これも子供に対してというよりは、母親に言ってないことに対して)が中心的に描かれていて、良い意味でストレートな作品だった。

1960年代の女性解放運動によって、中絶は法律的に認められたが、アメリカという国はどうしても州によって保守的だったり、宗教的な観点から、中絶や未婚の母自体を完全悪だと思っているなど、口に出さなくても根深いものがまだあるわけだ。

オータムが住んでいるペンシルベニア州も中絶は合法化されているものの、4分の1以上がキリスト教カトリックだったりする。だから医者の対応の仕方ひとつとっても、ペンシルベニア州の対応とリベラルなニューヨークに行ったときの、機械的な対応では全く違っていた。

カトリックは中絶禁止の意識が強くて、オータムや家族がキリスト教信者でなったとしても周りにそういった考えの人が多いということからも、若いオータムにとって、差別や迫害の目でみられるというのは、耐えきれないだろうし、
10代にとっては自分の夢だったり、将来もある。今の家庭環境もとても裕福ではない。

この生活サイクルもしくは、それ以下の生活になってしまうとしたら将来が絶たれてしまう。偽善的な母性どうこうよりも、そちらの方が先行してしまう。

オータムのお母さんは優しそうではあったからこそ、産むことを進めるかもしれない。だけど、その回答もオータムにとっては恐怖だったようにも思えた。

妊娠もそうだし、中絶自体も一度打ち明けてしまうと、結果がどうであれ元には戻れないということからも、なかなか打ち明けられない中で、少しドライな性格で、表面上は心配しているようでも、深刻にはあまりとらえていない。
だけど、それが別に優しくなかったり、興味がないわけではない。という丁度いい距離感のある従妹のスカイラーといるのが、逆に心地よいというのも伝わってくるのだ。

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セリフで多くを語らず、映像やキャラクターの表情で伝える映画であって、逆にそれがリアルで訴えかけるものが多いとも感じた。

劇中でお腹の子供が誰の子かは語られない。義父による性的暴力というのも考えられるが、実はそれはミスリードではないだろうか…

リアルな10代という点で、 義父による性的暴力だったり、少し一般的ではない悲劇的なものが背景にあるような特殊なキャラクター造形ではない気がしたのだ。世界中で性的虐待が多いとはいっても、少数派であることに違いない。

これは、義夫だからということや、少し暴力的だから~という世間からの男性への固定概念が引き起こしていたり、様々な映画やドラマによるマイナスイメージによるものも大きいとも感じた

ただ、語られていないから、わからない。義父の性的虐待の可能性もないとは言い切れない。

しかし、10代であれば、起こり得ることをストレートに描いている点で、そんなドラマチックなのかな?とも思ったのだ。

俯瞰として観て、この場合だと、この映画を観ている私たちが、劇中の環境や状態から、勝手に推測し、肉づけしてしまう。そんな外側の目に映るものではなく、実は主人公はシンプルな感情なのかもしれない。そこのギャップや温度差も描いている気がした。

アメリカという国が抱えているものを知ったうえで観ると、より理解できる作品ではないだろうか。

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クレジット

■原題・英題
Never Rarely Sometimes Always

■クレジット
監督・脚本:エリザ・ヒットマン
出演:シドニー・フラニガン タリア・ライダー セオドア・ペレリン ライアン・エッゴールド シャロン・ヴァン・エッテン
プロデューサー:アデル・ロマンスキー、サラ・マーフィー
製作総指揮:ローズ・ガーネット、ティム・ヘディントン、リア・ブマン、エリカ・ポートニー、アレックス・オーロブスキ、バリー・ジェンキンス、マーク・セリアク
2020年/アメリカ/101分/ユニバーサル作品
配給:ビターズ・エンド、パルコ
原題:Never Rarely Sometimes Always

■公開日
2021年7月16日

■公開情報
7月16日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー!

■公式サイト
17hitomi-movie.jp

点数 85

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