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この映画語らせて!ズバッと評論!!『シカゴ7裁判』すでに結果が決まっている見せしめの政治裁判に勝つ方法はあるのか?!

作品情報

『ソーシャル・ネットワーク』『マネーボール』などで知られるアーロン・ソーキンがメガホンをとったNetflixオリジナル映画で、ベトナム戦争の抗議運動から逮捕・起訴された7人の男の裁判の行方を描いた実録ドラマ。キャストには、「ファンタスティック・ビースト」シリーズや『ブーリン家の姉妹』のエディ・レッドメインをはじめ、『ドン・ジョン』『プロジェクト・パワー』ジョセフ・ゴードン=レビット、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』のサシャ・バロン・コーエン、『スパイダーマン:ホームカミング』『クローンズ』のマイケル・キートン、『レディ・プレイヤー1』『ダンケルク』のマーク・ライランス、『ザ・ジェントルメン』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のジェレミー・ストロング、『WAVES ウェイブス』『ルース・エドガー』のケルビン・ハリソン・Jr.、『アクアマン』『グレイテスト・ショーマン』のヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、『ブラック・ビューティー』『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』のケイトリン・フィッツジェラルドらメインやら脇役まで豪華俳優陣が集結した。1968年、シカゴで開かれた民主党全国大会の会場近くに、ベトナム戦争に反対する市民や活動家たちが抗議デモのために集まった。当初は平和的に実施されるはずだったデモは徐々に激化し、警察との間で激しい衝突が起こる。デモの首謀者とされたアビー・ホフマン、トム・ヘイデンら7人の男(シカゴ・セブン)は、暴動をあおった罪で起訴され、裁判にかけられる。その裁判は陪審員の買収や盗聴などが相次ぎ、後に歴史に悪名を残す裁判となるが、男たちは信念を曲げずに立ち向かっていく。

『シカゴ7裁判』レビュー

豪華出演者を揃え、実際にあったシカゴ7裁判をベースとして描いた作品。実は今作の企画は2008年頃から存在しており、監督であるアーロン・ソーキンが2008年に脚本を完成させており、一度スティーヴン・スビルバーグらが製作準備を初めていたが、2007-08年におきた全米脚本家組合ストライキによって製作が困難になったことから、一旦白紙にされていた。

全米脚本家組合ストライキによって中止になったり、当初予定していた展開を大幅に変更するしかなくなってしまった映画企画やドラマシリーズは多く、ジョージ・ミラー版『ジャスティス・リーグ』や『デスパレートな妻たち』『ヒーローズ』 なども被害を受けた。

アーロン・ソーキンという監督は、『ア・フュー・グッドメン』『アメリカン・プレジデント』など政治的な作品を多く手掛けていて、今回も政治色の強い作品となっていて、本領発揮といったところだ。

1969年のベトナム戦争反戦運動家とアメリカ合衆国が争ったシカゴ・セブン裁判がベースとなっているのだが、この裁判の結果はすでに決まっていたも同然で、世間への見せしめとして、活動家の代表や現場に行ってもいないはずのブラックパンサー党までもが訴えられるという捏造された茶番的裁判である。

目的としては同じ方向は向いていながらも、それぞれの思想や行動は異なっている中で裁判に勝つために団結していくプロセスは法廷ものの醍醐味でもあるが、そんな願いや希望も打ち砕かれる国の捏造や不正の数々。

本来は起訴できない案件を覆し、有罪にするように主任検事を任されたシュルツも、あまりにも国寄りで都合の悪い事実は認めない判事に憤りを感じながらも自分の立場や責任を全うしなければならないという葛藤に苦しむことになる。

ケネディ暗殺、キング牧師暗殺、ベトナム戦争激化とアメリカという国のあり方が常に問われてきた時代を生き、自分たちが国を変えなければいけないと心に誓い戦う、それぞれの立場のキャラクターの想いが交差することでニクソン政権下におけるアメリカ政府の闇を浮き彫りにしていくのと同時に、公平であるべき法廷が国側に偏り過ぎていて、どうしようもできない悔しさというのが弁護士の目線を通してよく描かれている。

メインキャラクターを演じている俳優たちの演技もさることながら、反論する度に法廷侮辱罪と言われながらも戦い続けた弁護士ウイリアム・クンスラー役のマーク・ライランスの演技にも注目してもらいたい。

点数 89

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