作品情報
父も息子も、パリの華やかなクラシック界で活躍する指揮者の親子。ある日、父・フランソワへ一本の電話が。それは夢にまで見た世界最高峰<ミラノ・スカラ座>の音楽監督就任の依頼だった。しかし、息子のドニは父の偉業を素直に喜ぶことができないでいた。翌日、ドニにスカラ座の総裁から呼び出しが。なんと父への依頼は、息子への依頼の誤りだった。ドニは父に真実を伝えなければいけない苦渋の選択を迫られる―――。
『ふたりのマエストロ』レビュー
ストーリーとしては非常にシンプルではあるものの、多くのユーザーが観たい展開を踏んだ作品といえる。
主人公ドニにとって、同じ指揮者である父のフランソワは師であり、ライバルであり、敵であり…..といった関係性のなかで、自分の中で互いに障害でもあるという「美味しんぼ」のような親子関係。
いつしか疎遠になり、同業者でありながらも避けるようになっていた親子の絆を再生させるきっかけとなったのは、ある一本の間違い電話だった。
それが間違いであったと知らない父に対して、知ってしまった息子が父のプライドや夢を傷つけないためにと思うがあまり、より疎遠状態になってしまうものの、そんな隠し事もいつまでもできない。
息子が自分の夢を叶えたという嫉妬、困惑、しかしどこかで喜びもあるという複雑な心情と、その一方で父の夢を奪ってしまったという罪悪感を抱えながらも、やはりひとつのステータスであるスカラ座での公演は胸も躍る。そんな両極端な心情を抱えるふたりが互いにどう向き合っていくのかを描いている。
そこに母との関係、元妻、恋人、息子との関係も交差し、物事はより複雑になっていくものの、どれもが解決していかなければならなかったり、いつかは考えるべきことだったりで、人間同士の結びつきが人生をより深いものにするということを改めて感じさせる物語ともなっている。
この作品は、新たな一歩踏み出すことへの障害となっていたものを克服していく、あくまで分岐点、通過点を描いているに過ぎず、これからが本番!といったような、ネクストステージへのプロローグといったところだろうか。
上映時間も短く、要点だけを無駄なくつまんで、あっさりとした作品ではあるのだが、ステージのパフォーマンスシーンにはもう少し尺を使ってもよかったのではないだろうか……。
点数 80
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