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この映画語らせて!ズバッと評論!!『Pearl パール』若さへの執着が強かった、悲しい殺人老婆の原点がここにある!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『Pearl パール』若さへの執着が強かった、悲しい殺人老婆の原点がここにある!!

作品情報

1918年、テキサス。スクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れるパールは、敬虔で厳しい母親と病気の父親と人里離れた農場に暮らす。若くして結婚した夫は戦争へ出征中、父親の世話と家畜たちの餌やりという繰り返しの日々に鬱屈としながら、農場の家畜たちを相手にミュージカルショーの真似事を行うのが、パールの束の間の幸せだった。 ある日、父親の薬を買いに町へ出かけ、母に内緒で映画を見たパールは、そこで映写技師に出会ったことから、いっそう外の世界への憧れが募っていく。そんな中、町で、地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは、オーディションへの参加を強く望むが、母親に「お前は一生農場から出られない」といさめられる。 生まれてからずっと“籠の中”で育てられ、抑圧されてきたパールの狂気は暴発し、体を動かせない病気の父が見る前で、母親に火をつけるのだが……。 

『Pearl パール』レビュー

前作『X エックス』に登場した殺人老婆パールの前日譚となる今作。

介護が必要な父と介護疲れで精神的に限界にきている母、そして戦争に行ってしまった夫。

そんな一部では自由がない抑圧された環境の一方で、のどかな農場での生活は自由が有り余っている。同じフィールドなのに、自由の有無が共存しているという特殊な環境は、良くも悪くも現実から目を逸らす環境には適していることから、現実逃避が行き過ぎてしまうこともあった。

戦争やスペイン風邪の流行という、先が見えない未来に夢を見たパール。それはたったひとつの希望であり、彼女が見ていたったひとつの世界でもあった。

X エックス』の場合は、舞台となっている70年代のジャンルホラーへのオマージュを散りばめたギミック満載の作品としての魅力はあったが、主人公マキシーンや殺人老婆パールのバックボーンに関しては、ざっくりとしか触れられていなかった。

ただ、そんな中でもパールが若者たちの映画クルーを見たことで、自分の老いと改めて向き合い、戻ることができない若さ、そして時代が違っていたらというもどかしさなどの感情が交じり合った視線というのは、明確に表現されていた。

それに加えて、今作が制作されたことで、『X エックス』というメタジャンルホラーの内容により一層も二層も深みが増していることは間違いなく、改めて次回作の『マキシーン』も含めて、3作を通して、このシリーズの価値が確定するのだと思い知らされる。

またマキシーンとパールを同じミア・ゴスが演じているというのは、キャスティングのお遊びというわけではなく、『X エックス』でパールとマキシーンの人生はクロスしたという意味でもあり、つまりタイトルの”エックス”は”クロス”を意味している。

マキシーンもまた歳をとり、おかれている環境が違ったとしても、向かうところは同じなのかもしれない。

そしてそれは「ハロウィン」シリーズが描き続けている、不安や恐怖の連鎖が狂気に向かう精神構造にも通じる部分があるといえるだろう。

点数 82

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